国土交通省は先ごろ、新型コロナウイルス感染対策を主題とした港湾の事業継続計画(BCP)ガイドラインを作成した。港湾や入港した船舶で感染症が発生、拡大すれば、船舶の長期停留や港湾での事業活動の停止を招き、港湾機能継続が困難となる。ガイドラインは、その回避、影響の軽減を目的としたもの。物流・旅客それぞれの観点で、未発生期から小康期まで5段階ごとに感染に備えた体制、対応などを示している。引き続き感染症に関する実績や新たな知見を積み重ね、必要に応じてフォローアップや内容を改正していくことが望ましい。

 資源、エネルギー、穀物をはじめとした多くの物資を海外に依存する日本では、港湾が国際海上貿易、国内海上交通・物流の拠点として重要な役割を担っている。ウィズコロナの時代においては港湾で感染または、その疑いが発生した場合でも、影響をできるだけ抑え、海上物流の拠点としての機能を継続することが強く求められる。

 ただ最近ではクルーズ船や貨物船において、新型コロナウイルスに感染した乗客・乗員の搬送、船内消毒などのために船舶が港湾内に長期間停留し、荷役や、その他船舶の利用に支障をきたす事例が発生している。外航貨物船では、感染の疑いがある船員に対する臨船検疫などのために特別の対応が必要となったとの報告も少なくない。

 国内125港においては非常災害発生時に対応した港湾BCPが策定されており、実施体制や災害発生時の対応計画、平時の事前準備などを定め、対応にあたっての関係者の連携や実効性を確保することとしている。その考え方は、災害時だけでなく他のリスク発生時にも活用が期待できるが、感染症への具体的な対応については明確になっていなかった。

 国交省がこのほど作成した「港湾の事業継続計画策定ガイドライン【感染症編】~港湾における感染症BCPガイドライン~ver1・0」は、感染症発生・拡大時におけるBCPの具体的な活動指針となる。記載内容を参考にしながら、各港の実態に合わせた港湾BCPの感染症対策編が策定されることを想定している。

 自然災害時に係る港湾BCPは、発災後の港湾機能の維持、早期回復を目的とする。発生後の対応が不十分な場合、港湾機能に与える影響が、さらに悪化する恐れがある感染症BCPについては、影響拡大を抑制する対策も重要となる。手指消毒やフィジカルディスタンスの確保など、基本的な感染対策の徹底が必要不可欠であることはいうまでもない。

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