韓国の石油化学企業がカーボンニュートラルの実現への構造転換を鮮明に打ち出している。

 LG化学は7月、持続可能な成長に向けた事業ポートフォリオの転換を宣言。電池素材、医薬品開発に加え、環境対応型の石油化学製品を3大成長分野と位置づけ、併せて約10兆ウォンを投じることを表明した。翌月には石油化学品事業の本拠地の一つである韓国の大山拠点に、2028年までに2兆6000億ウォン(約2400億円)を投じて「ESG関連事業のメッカ」として発展させると発表した。

 用地79万平方メートルを取得し、すでに生分解性プラスチックのポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)や太陽電池用ポリオレフィンエラストマー(POE)、次世代型水素化植物油(HVO)の新工場建設を決めた。いずれも24年までに完成させる。今後は廃プラスチックリサイクルなどを含め、合わせて新工場を10棟を建設する。

 韓国SKイノベーションの子会社であるSKグローバルケミカルは先月末、9月から社名を「SKジオセントリック」に変更し「再生プラスチック廃棄物を使用する世界最大の都市油田企業」を目指すと宣言した。プラスチックリサイクルやグリーンマテリアルの拡大に向けて25年までに5兆ウォン(約4800億円)を投資する。

 SKジオセントリックは、目標達成に向けて外部と連携を積極的に推し進めていく方針。すでに廃プラを熱分解してナフサを抜き出す技術を開発し、1月に米ブライトマークと、韓国初の大規模な熱分解プラントの商用化と設備投資に向け覚書(MOU)を締結した。7月にはポリエチレンテレフタレート(PET)の解重合技術を持つ加ループインダストリーの株式10%を取得。30年までにアジアに4つの生産施設を建設し、合わせて年40万トンを処理する計画に乗り出した。8月には廃ポリプロピレン(PP)のリサイクルを目的に、米国のリサイクル企業ピュアサイクル・テクノロジーズとの合弁設立を決定。韓国に年間約5万トンの処理能力を持つリサイクルプラントを建設し、25年までに商業運転を開始する。

 錦湖石油化学は先月、米アジリックスと共同で、合成ゴム原料への利用を目的に、韓国で廃プラスチックのケミカルリサイクルプロジェクトを検討すると発表した。

 パリ協定が目指す今世紀後半のカーボンニュートラル実現には、30年までに10年比でCO2排出量を約45%削減する必要がある。残された時間は短い。日本企業にも、韓国企業くらいのスピード感が必要ではないか。

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