わが国はじめ世界的レベルで課題となっている物流分野のタイト化。一般貨物だけでなく化学品物流業界でも、ISOコンテナや危険化学品の倉庫、一次的な貯留・置きスペースが不足。さらに化学品タンクヤードも慢性的に高水準の受け入れ状態が続く。新型コロナウイルスの影響を注視しつつも自動車や樹脂、加工を主に各社の事業が比較的好調に推移する中部地域。ここでも「化学品物流のタイト化」が大きな課題だ。電子・半導体向けの原材料や副資材の化学品、さらに、さまざまなオートケミカル製品も活発な荷動きを見せる。地場の化学系物流のトップは「顧客や需要家、その先のエンドユーザーも含め実需と仮的なオーダーが交じって、ひっ迫が続く」と現状を説明する。

 こうした事態に、中部地域に本拠を置く化学系物流各社は、当面の顧客対応に全力を注ぐとともに受け入れ貯蔵、配送、一次保管など各段階の一層の効率化や見直しなどを図っており「可能な限り顧客要望に応じられるよう努力する」(名古屋港に本拠を置く化学系貯蔵ヤード企業)。四日市(三重県)で化学品ローリーハブの拡張・拡大中の某社は、愛知エリアの扱い分を四日市に一定シフトして緩和措置とする。タンク企業も、メンテナンス時期の調整などで貯蔵・保管の効率アップに取り組む。さらにメーカーサイドでも、福井港や清水港、四日市港など名古屋港に偏重していた物流の分散と、サプライチェーン強化・ソース多様化のため、他港における荷揚げや出荷ルートの開拓に乗り出している。

 中部経済連合会(会長・水野明久中部電力相談役)も、これら物流全般の課題に注意を払っており、先ごろ国土交通省の中部地方整備局と情報交換を行った。昨年度には、中部地域における物流効率化のため会員参加の「物流懇談会」を新たに立ち上げ、各企業からの現状ヒアリングや協議を重ねてきた。水野会長は「物流の効率化は、わが国のモノづくり拠点である中部地域が国際競争力を維持・強化し、引き続き日本経済を牽引していくために不可欠」という認識を改めて示す。

 中経連は、国際物流の窓口となる「港湾物流の効率化」について中部地方整備局の協力も得て今後、報告書をまとめる予定。化学品物に限らず一般貨物コンテナの常態的な不足緩和や、通関作業の電子化を含む一層の効率化なども大きな課題である。行政側と経済団体のこうした取り組みを通じて、企業の現状を正確に捉える必要がある。産業支援や施設拡張などインフラ再整備につながる動きとしても期待したい。

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