市場環境の変化のスピードが速まるなか、企業も顧客ニーズに機敏に対応することが要求される。それを目的に化学企業では組織体制を大幅に見直す動きが目立ってきた。全体最適化を進め、次代を担う新規事業にも効率的に投資できる体制を作るのが狙いだ。背景には、変化の激しい市場で存在感を高め、いかに持続成長を図っていくかという危機感がある。
 ダイセルは、マーケットイン型の体質に転換するため大幅な組織変更に着手。第1段階として昨年10月、全社横断的な戦略立案・推進を迅速化する目的でコーポレート機能を強化した。さらに来月には、技術・製品単位の現在のカンパニー制から、対面市場・顧客に主眼を置いたビジネスユニット(BU)による組織改革を行う。
 昨秋のコーポレート機能強化は、BUに大幅な権限移譲後のバックアップ体制を整えることが狙いだ。2020年度からの10年間の長期計画、その第1ステップとなる中期計画をスタートさせる同社は、収益回復と次の成長に向けた「スピード&シンプルな改革」を推し進めている。M&A(合併・買収)も積極的に進めて最適なサプライチェーンマネジメントを確立する方針で、その先にはホールディングス(HD)制への移行も視野に入れている。
 三菱ガス化学は4月、20年ぶりとなる大幅な組織再編に乗り出す。従来のカンパニー部門、コーポレート部門の体制を大括りな組織に再編。全体最適化を図ることで人的資源を最大限に活用し、顧客・市場ニーズに的確・迅速に対応可能な体制を構築する。
 従来の4カンパニーを「基礎化学品」「機能化学品」の2事業部門に統合。各部門にまたがる研究者も集約し、総力を挙げて研究開発活動に取り組む。新規事業の創出と育成、最適な事業ポートフォリオに向けた投資戦略の実行といった中計の重点施策を強力に推進していく。
 事業ポートフォリオ転換に最重点を置いた中計が2年目に入ったDIC。世界トップの「インキ」をセグメントの名称から外すなど大胆な組み換えを実施しており、高付加価値製品やサステナブル製品へのシフトを急いでいる。
 各社の組織再編の狙いは、変化の激しい市場に柔軟かつ機動的に対応できる体制を築くことだ。大胆な組織変更を打ち出したうえで、さらに最適な体制を追求しようとする企業も多い。全社の総力が発揮しやすい体制をいち早く築き、目標に一歩でも近づこうとする取り組みは、持続成長を目指すうえで不可欠になってきた。

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