生体組織を観察し、新たなメカニズムの解明や新たな分子・細胞の同定を行う生体イメージング研究。光学機器や蛍光・発光イメージング技術の進歩にともない、医学、生命科学など幅広い分野で研究が進んでおり、多様な疾患の病態解明や創薬・診断法開発への応用が期待される。いまや生体イメージングはライフサイエンス研究で必要不可欠な技術となっている。

 多くの企業が生体イメージングに関連する技術開発に取り組むなか、積極的に経営資源を投入しているのがニコン。同社は世界各国の主要な研究機関と提携して最先端のイメージング研究施設「ニコンイメージングセンター」を設立、グローバルな研究ネットワークを構築している。顕微鏡などの同社製品を活用した研究支援や製品開発の強化を目的として2001年に米ハーバード大学に初めて開設。それ以降、米カリフォルニア大学サンディエゴ校、英キングスカレッジロンドン、仏キュリー研究所といった国際的に評価の高い研究機関などに相次ぎ設けている。最先端の顕微鏡を利用した観察、画像の取得や処理、解析などを行うほか、最新のイメージング技術に関する教育プログラムの提供、研究者同士の交流の機会を創出している。

 10番目の拠点として新たに加わったのが、大阪大学医学部臨床研究棟(大阪府吹田市)に開設された「大阪大学・ニコンイメージングセンター」。ニコンイメージングセンターとしては初めて、生体内のさまざまな生命現象をリアルタイムで捉える顕微鏡イメージング手法の一つであるインビボイメージングを主体としている。インビボイメージングに最適なニコンの多光子顕微鏡、超解像顕微鏡、共焦点顕微鏡、細胞培養観察装置といった最新型の機器を揃えている。

 ニコンは、同センターを通じて顕微鏡の利用や画像解析技術の向上を目的としたトレーニングプログラムを提供するほか、研究者間の共同研究を推進するなど、外部含め幅広い分野の研究者をサポートする。センター常駐の特任技術職員や同社の技術スタッフが機器利用の指導および技術相談窓口となる。また適宜、最新の機器を提供して技術を更新していく予定。

 生体イメージングのような最先端分野の研究には、相応しい新たな研究体制とともに、高度な研究開発を推進できる技術者を育成する教育体制が必要となる。大阪大学・ニコンイメージングセンターは、生体イメージング研究の発展に貢献するだけでなく、産学連携の重要性を示す良い機会となってくれるに違いない。

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