革新的な産業用ロボット実現に向けて産学連携の研究開発がスタートする。昨年7月に政府がまとめた「ロボットによる社会変革推進計画」に基づくプロジェクトの一つとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「革新的ロボット研究開発基盤構築事業」の研究テーマに「産業用ロボットの機能向上・導入容易化のための産学連携による基礎技術研究」「変種変様な多能工作業を可能にするセンシング技術搭載エンドエフェクタの開発と実証」「果菜作物収穫システムの開発」の3件が採択された。同事業では、新素材開発が主要テーマの一つに位置付けられており、材料に関するわが国の技術開発力が期待される。

 産業用ロボットは自動車・エレクトロニクス分野で数多く導入されており、産業発展のうえで欠かせない基盤技術。少子高齢化などによる労働力不足の対応策としても期待され、食品加工や物流といった、あまり活用されていなかった分野へと市場が拡大する傾向にある。

 世界的にも同分野における取り組みは活発だ。すでに海外では産学連携によるイノベーション創出のためのエコシステムの構築が進んでおり、デンマークでは100を超えるロボット関連企業や研究・教育機関、投資関連企業などが参画し、ロボティクスにかかる基礎研究から市場参入まで一貫した事業推進・支援が実施されているという。

 NEDOが進める基盤構築事業は、多品種少量生産の現場をはじめ導入が進んでいない領域にも対応可能な産業用ロボットの実現を目指す。実施期間は2020~24年度。自動的かつ汎用的なロボットの動作計画技術やハンドリング技術、遠隔制御技術とともに、ロボットを構成する部材へ適応できる非金属や複合素材などの新素材を対象に研究開発に取り組む計画。

 同事業には8社11大学などが参画。既存技術の改良・改善をはじめ、サイエンスの領域に立ち返った技術開発や、異分野の技術シーズの取り込みなどによるイノベーションの創出を目指す。採択テーマでは、ロボットの軽量化を実現する新素材技術の基礎研究を実施。また多能工エンドエフェクタや果実を傷付けず収穫するためのエンドエフェクタでも、使用する材料が重要になりそうだ。

 日本の産業用ロボットは世界的に高いシェアを有するが、世界的に研究開発が活発化するなか、市場での地位を維持・拡大していくためには、さらなる高度化が必要。現状は各社単独でリスクの高い基礎研究を実施している実態もあり、今後の取り組みが注目される。

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