石油連盟が気候変動対策への対応として先ごろ定款を変更した。設立以来「石油」を事業対象としてきたが、新たに合成燃料や水素などを追加する。石油元売り最大手のENEOSを筆頭に、関連企業が事業ポートフォリオ転換を進めている。石連も市場の声に耳を傾けて、あり方を抜本的に見直そうとの考えだ。社会に不可欠な石油の安定供給とカーボンニュートラル(CN)の実現という大きな課題への挑戦に期待したい。

 事業対象の見直しは1955年の設立以来初めて。定款第1条の連盟の目的に「国民経済のサステイナブルな発展に寄与する」と持続可能性の表現を加えた。

 事業対象は「石油には、合成燃料や水素、その他CCUS(CO2の回収・利用・貯蔵)などのCN関連技術で低・脱炭素化した新燃料などを含む」と定義した。石連が携わる事業にも「石油に係る気候変動問題およびCNの調査研究」を加えた。合成燃料や水素、アンモニアなど関連技術の調査を国内外で行う。

 2020年10月の政府のCN宣言を受け、石連は19年に策定した「石油産業の長期低炭素ビジョン」を刷新し、「石油業界のCNに向けたビジョン」を策定している。事業活動にともなうCO2排出量の実質ゼロを目指し、省エネや再エネの活用・開発促進といった既存対策の強化に加え、CO2フリー水素の活用など技術開発による精製プロセスの変革、カーボンリサイクルなど30年までの「革新的技術開発」と50年に向けた「社会実装」に業界挙げて取り組む方針を打ち出した。

 そのためには合成燃料など革新的技術の開発による供給製品のCO2排出削減をはじめ、水素ステーションやEV(電気自動車)ステーションのインフラ整備、再エネ事業の拡大、廃プラリサイクル技術の開発や石化原料の次世代バイオマス転換などに挑むことが必要との認識だ。

 製油所は化石燃料である原油を精製し、燃料油や基礎化学製品を生産してきた。50年に向けては既存設備をうまく活用しながらもプロセス改造などを重ね、CO2フリー水素や回収CO2、バイオマス、廃プラなどを原料とした、新たな燃料や化学製品を製造する拠点に転換していく必要がある。定款変更には、そうした背景が色濃くにじむ。

 CNに向けたエネルギー転換は一朝一夕には進まない。その移行期間においては、化石燃料と新燃料をバランスよく組み合わせることが欠かせない。日本のコンビナートの要でもある石油業界の構造転換は、川下の化学企業の将来にも直結する取り組みであると認識すべきだろう。

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