第6波の懸念は残るものの緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は全面解除され、持続成長へ向けた企業の取り組みが加速しそうだ。コロナ禍の2年弱、各社はこの苦難に立ち向かうべく緊急的な対応を図り、多少の犠牲を払ってでも存続をかけて投資してきた。すでにウィズコロナ・アフターコロナを見据えて具体的な経営戦略を実践する段階に入っている。

 コロナ禍で多くの企業はビジネスモデルや事業形態を変更した。日本能率協会が7月20日から1カ月にわたり実施したコロナ禍の影響に関する調査では、5割以上の企業がそう答えた。とくに宿泊・飲食・給食サービスが8割超、小売、不動産も6割を上回った。さらに、柔軟な働き方や勤務形態の拡充に取り組んだ企業が9割近くに達し、8割以上が社内情報システムの強化・拡充、7割以上が営業手法の見直しを行った。

 ただ、この間に普及した在宅勤務は、大企業の51・6%が継続すると答えた一方、中小企業の35・8%が中止・実施しないと回答した。昨年の同時期の調査との比較では、全体では継続するが61・3%から39・8%へ大幅に減り、縮小して実施、または中止・実施しない割合が上昇している。多くの企業が緊急的に実施せざるを得なかったリモートワークの広がりで社員のストレスや職場のコミュニケーション、人材育成などにマイナスの影響が及んでいることが背景にあるとみている。

 同協会では経営課題について同時期に調査しており、昨年急増したテレワークなどの多様な働き方の導入と答えた企業は大幅に減った。代わって人事制度の見直し、次世代経営層の発掘・育成との答えが上昇した。

 当面の課題としては人材育成、売り上げ・シェア拡大が昨年より上昇。研究・開発や生産領域においてデジタル技術の活用を重要課題とする企業が増加した。5年後の課題としては、事業を通じた社会課題解決の比率が2倍となっている。昨年度の調査ではコロナ禍への緊急的対応を経営課題とする企業が多かったのに対して、今回は今後の成長を見据えた課題へとシフトしていることがうかがえると同協会は指摘している。

 もちろん、先行きについても新型コロナウイルス感染再拡大への備えは不可欠。同時に、この間に築き上げた基盤を将来の飛躍に生かす工夫も続けるべきだ。デジタル化、多様性といったキーワードは今後も外すことはできない。カーボンニュートラルを含めCSR(企業の社会的責任)という絶対条件を満たす経営戦略の実践は、これからが本番である。

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