米粉を使った「食」が広がっている。大手量販店やファストフードでの採用、ホテル、レストランなど飲食業界のグルテンフリーニーズに応えられる点が市場形成に寄与している。
 農林水産省によると、2019年度の主食用米の需要量は726万トンだった。20年度は前年度比10万トン程度少ない708万~717万トンと見込まれ、年々減少傾向にある。米粉の需要を増やすことは、米の消費減少を食い止める対策の一つとなり得る。米の消費は、肥料や農薬などの化学系農業資材の需要をも左右する。米粉がブームに終わることなく、着実に市場が拡大すれば、これを使った食品は大きなカテゴリーになるだろう。食料自給率のアップにつながることを期待したい。
 米粉は、米を細かく砕いて粉状にしたもの。農水省の分類では新規需要米に入る。日本米粉協会がまとめた19年度の米粉の需要予測は3万6000トン。20年度は、さらに3000トン上回る3万9000トンと予測している。米の消費全体からみれば小さな存在だが将来、米粉が食品素材として食の底辺を支える可能性は大きい。
 それはグルテンフリー食品が製造できるという強みがあるからだ。麦類に含まれるたんぱく質であるグルテンは、小麦粉から作る生地に弾力と粘りを与える。ふっくらとしたパンやコシのある麺づくりに欠かせない。しかし人によっては食べ続けると体調が悪くなったり、肌のトラブルを招くという。このため欧米ではグルテンフリー食品の市場が拡大。日本でも健康志向の高まりから興味を示す人は多く、摂取機会が増している。
 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)では、各地域での栽培に適した水稲品種として製パンに適した「ほしのこ」「こなだもん」、麺用に高アミロース系の「北瑞穂」「ふくのこ」などを開発し、生産者の選択肢として提案している。
 一方、市場では、イオントップバリュがプライベートブランドによる米粉パンを多数店舗で展開。ケンタッキーフライドチキンも、低アレルゲンチキンセットというセットメニューに米粉パンを採用した。スーパー大手ではグルテンフリーコーナーを新設。飲食業界でもホテル、レストラン、旅館などがこぞって米粉使用メニューを提供するなど活発な動きがみられる。
 ただ需要が伸びるなかで供給が追いつかない状況が18年度以降続いている。需給バランス改善のためには、主食用からの転換ではなく、新規栽培へと転じる必要があろう。米の増産は、農業用化学品の活躍の場を広げることにもなる。

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