福井、富山、石川の3県からなる北陸圏が堅調な経済復調の兆しを見せている。3県合わせて約13兆円(域内総生産)の規模を持つ北陸圏は、数年前の11兆円台から段階的に生産額を上昇させてきた。中部圏や関東、関西に及ばないものの「近年は富山を中心とする医薬産業や福井、石川で一定規模の生産集積があるファインケミカル業種」(経済産業省中部経済産業局北陸支局)が着実に伸びているほか、ここ数年で自動車関連や電子デバイス・部材の産業が急成長している。

 7月初め、日銀が全国支店長会議に向けて各地の景況動向をまとめた地域経済報告(さくらリポート)を発表。全国を9地域に分けた報告で、5地域の判断を現況のまま「据え置いた」半面、北陸や近畿は景況判断を上方修正した。会議後の会見で日銀は「北陸では電子部品や生産機械などの好調な輸出」が上方修正判断のポイントと説明した。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で各地の地域経済は厳しいが、昨年末ごろから地域経済が復調した中部経済圏をはじめ、北陸地域も自動車関連産業の好調や高水準な生産が続く医薬関連を背景に実質、景況回復が見えてきたと言えるだろう。

 実際、福井市内で「(コロナによる人の移動は制限されるが)企業訪問を目的とするビジネス系の利用依頼は昨年より多くなってきた」(福井駅のレンタカー会社受付)、「金属加工や樹脂工場など仕事目的の往復手配も結構受ける日が増えた」(鯖江市内のタクシー)といった声が聞かれ、北陸地域の街角景況について昨年ほど悲観的な言葉をを耳にしなくなった。

 北陸3県の経済状況を俯瞰する中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局が今年3月にまとめた「北陸経済のポイント」でも、3県合わせた全国における経済シェアは、数年前の約2・8%から現在3%へと上昇。製造業においては四国、北海道を凌ぐシェアを持つ。このところの北陸における製造品目の出荷額変遷で伝統産業となる繊維工業が割合を下げた半面、生産や業務用機器、機械、電子部品やデバイス産業が地域の基幹産業の一つとして成長してきたという。さらに北陸地域は化学産業も集積。医薬品などを中心にファインケミカル業種の割合も伸長している。

 13兆円の総生産規模を持つ北陸経済圏。その金額だけを見れば欧州やアジアの中小規模国の国家予算額レベルにも匹敵する。3県合わせ約300万人の人口規模で、この生産額を創出しているのだ。ただし世界的視点で見れば、まだまだ成長余力がある地域と言えるのではないか。

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