環境規制が繊維産業でも本格化しそうだ。欧州ではプラスチックに続き、その動きがみられるという。欧州の環境政策は世界に多大な影響を及ぼすだけに注目を集めている。

 欧州では2010年代以降、プラスチックに対する規制を強化してきた経緯がある。欧州委員会の決定により、加盟各国では10年代半ばからプラスチック規制を強化してきた。今後はリサイクルの推進や使い捨て商品を禁止する「サーキュラーエコノミー」、プラスチック代替素材の開発を推進する「バイオエコノミー」の方向に舵を切ることとなりそうだ。

 一方、繊維については、同じ期間内、表面化した規制の動きはみられなかった。しかし20年3月に欧州委が公表した「欧州循環経済行動計画」(サーキュラー・エコノミー・アクションプラン)で、繊維分野における取り組みや包括的な繊維戦略の策定に関して記述。これを受けて業界団体などが行動計画をまとめた後、21年中に「EU繊維戦略」を公表するという。欧州で繊維製品に関する各種環境規制の枠組みが整い、25年までに実行に移される見込みだ。

 染色加工などを必要とする繊維は、水の使用量が多い産業として知られる。繊維メーカーが改善を重ねているものの、欧州委の見立てでは、1次原料および水の使用量は食料、住宅、輸送に次いで第4位。地球温暖化ガスの排出量でも第5位となっている。また使用ずみ繊維製品が新製品にリサイクルされる割合は、世界で1%にも満たないとされている。

 この繊維産業の現状に対し、サーキュラー・エコノミー・アクションプランは①サステナブルな繊維製品を選択しやすくするための仕組み②循環型繊維製品を開発するための規制改善③化学物質管理の仕組みの整備-などの策定を求めている。

 ここで重要となるのが「エコデザイン」の概念だ。原料調達から製造、物流、破棄、リサイクルにいたるまで、すべての工程で環境に配慮した企画・設計を施すというものだ。川上から川下までバリューチェーンの長い繊維産業において、すべての関係者からコンセンサスを得ることは困難を極めるだろう。しかしSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、繊維産業も“待ったなし”の状況にある。エコデザインを意識した産業構造を徹底せねばならない。

 さらに世界各地域の繊維団体と共通認識を図るといった、横への広がりも不可欠となる。日本化学繊維協会には、国内でのサステナビリティ普及はもちろん、欧州とアジアをつなぐ役割も期待したい。

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