船舶燃料に含まれる硫黄酸化物(SOx)の濃度を、従来の3・5%以下から0・5%以下に引き下げることを義務付けた国際規制(SOx規制)が今月1日、本格的にスタートした。海運業界では規制適合燃料への切り替えを中心に対応を進め、これまでのところ大きな混乱はみられていない。ただ燃料の安定供給・市況動向など懸念材料も残っており、中長期的な視点での取り組みが求められる。
 今回の規制強化は国際海事機関(IMO)で2016年10月に採択された。大型船などで主力燃料とされてきた硫黄分を多く含むこれまでのC重油は、一般海域において、そのままでは使用できない。違反した場合、当該国の監督下で船舶の港湾抑留や罰金などが科せられる。
 規制への対応策として低硫黄燃料(適合燃料)の使用、排ガス脱硫装置(スクラバー)の船舶への設置、液化天然ガス(LNG)など硫黄分を含まない代替燃料の使用―などがある。このうちスクラバー搭載は燃料コストが抑えられる半面、設置・維持費用の負担が大きいうえ、償却に数年かかるといった問題がある。LNG船についても新造キャパに制約があるなどの理由から、一部のタンカー船やクルーズ船での取り組みに限られている模様。結局、約5万8000隻とされる世界の商船群のうち9割以上が適合燃料での対応を選択したとみられる。
 国内では規制対応への準備を着実に進めてきた。国土交通省は、規制適合油を使用して実際に内航船4隻を運航するトライアル事業をこのほど実施し、いずれも問題なく燃料切り替え・運航が可能なことを確認。すでに元売り各社も適合燃料の供給を本格的に始めている。
 小型船が主流で、従来から主に硫黄分の少ないA重油を使用してきた内航海運を含め、これまでのところ適合燃料への切り替えは概ねスムーズに進んでいるようだ。しかし適合燃料は従来燃料に比べて割高なのがネック。今後、需給がタイト化して高騰すれば、物流コストの上昇というかたちで経済全体に影響が及ぶことは避けられない。また適合燃料を使用し続けることによるエンジンへの影響についても、長い時間をかけて検証していく必要がある。
 IMOは18年4月に「GHG削減戦略」を採択。国際海運における温室効果ガス(GHG)の総排出量を50年に08年に比べ50%削減するという目標を掲げている。日本は世界有数の海洋大国として、環境問題の解決へ向けて重要な役割を担っているのは言うまでもない。SOx規制への対応のみならず、積極的な取り組みを期待したい。

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