産業機械の受注が苦戦している。2020年に入り、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、顧客は設備投資に慎重姿勢をみせている。なかでも内需の製造業向けは大幅マイナスが続き、なかなか浮上の兆しがみえない。一方、外需では8月に中東で化学プラントの大型案件を受注した。今後も中東で大型案件の成約があれば、20年の合計は前年実績並みを確保できそうだ。

 日本産業機械工業会がまとめた今年1~8月の産業機械受注は、合計3兆1783億円(前年同期比2・8%減)と落ち込んだ。内需は2兆1670億円(同4・5%減)、外需が1兆113億円(同0・9%増)と内需の低迷が目立つ。

 内需のうち製造業向けをみると、1~8月で合計6141億円(同19・4%減)と約2割の大幅なダウンだった。製造業向けは19年に低迷し、20年に入った当初、回復が期待されたが、新型コロナの直撃を受けた格好にある。

 産業機械メーカーは新規設備の受注が難しくなるなか、アフターサービスのビジネスを強化している。近年のAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の開発、普及を背景にライフサイクル全般でサービスを提供できる体制を整えることで、新規案件の減少分を補う考えだ。とはいえ、新規投資の案件がないなかでアフタービジネスの拡大には限界がある。

 今後、内需の製造業向け設備投資が、どのタイミングで戻るかは予測が難しい。そうしたなか、民間企業では5G(第5世代通信)の進展、コネクテッド、自動運転、電動化への対応、電気自動車(EV)向け2次電池材料、デジタル化にともなう電気・電子関連の加工・素材といった、新しい成長分野での開発が世界規模で活発化している。新規製品を育成できれば次の需要に期待できそうだ。

 このほかに内需で非製造業向けをみると、電力関連が中心になる。しかし電力関連は19年後半に活発な設備投資があったため20年は端境期で、新規受注は見込めない。ごみ焼却プラントなど官公需は1~8月合計で4886億円(同49・9%増)と伸長した。

 一方、外需は1~8月合計で微増の1兆113億円だった。これは8月に中東地域で化学プラントの大型案件の受注があって全体を押し上げたもの。

 現在、それ以外にも中東で大型石化プラントの案件があるようだ。これらが年内に獲得できれば、20年の産業機械受注は19年並みの実績に届く見通しだ。内需の浮上が難しくなるなか、外需の健闘を期待したい。

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