リチウムイオン2次電池(LiB)を搭載した定置用蓄電システムの出荷数が年々増加している。日本電機工業会(JEMA)の調べによると2020年度の出荷は12万7000台。19年度より鈍化したものの、前年比10%の成長を記録した。JEMAが自主統計を開始した11年以降、20年度までの累計出荷台数は49万1000台。21年度は60万台を超えそうだ。

 蓄電池の普及は、補助金制度に加えて、環境意識の高まりや災害対策、企業のBCP(事業継続計画)対応、太陽光発電の自家消費ニーズ拡大といった要因が大きい。なかでも住宅に設置した太陽光発電の売電価格が年を追って下がり、個別住宅での蓄電池導入の追い風となっている。

 例えば10キロワット未満の太陽光発電の売電価格は、12年が42円/キロワット時だったの対し、21年度は19円/キロワット時とピーク時の半分以下まで減少した。22年度はさらに下がり、17円/キロワット時と計画されている。この価格では、電力を売ることよりも自宅で使用することにインセンティブが働く。生成した電力を夜間に使用できるように、今後も個別住宅で蓄電池の導入が進むと予想されている。

 ただ普及拡大の課題がいくつかある。その筆頭がコストだ。個別住宅に据え付けるタイプでは100万円を超える価格が一般的で、簡単に購入できる代物ではない。

 また価格に見合う価値を消費者にアピールすることも重要だ。スマートフォンから電気自動車(EV)まで、LiBはさまざまな機器に使用されているが、LiB自体を熟知する消費者は専門家以外、ほとんどいない。どんな材料を用い、どういう設計思想でLiBを製造しているのか、そのストーリーを消費者に届けない限り、価値は伝わらないだろう。メーカーよる啓発活動は、今後の蓄電池の普及に欠かせない要素となる。

 さらに出口を見据えた製品開発力にも磨きをかける必要がある。その一例がEVとマンションとをつなぐ可搬型の蓄電池だ。個別住宅ではEVを「走る電池」と見なし、定置用蓄電池のような使用も可能となるが、マンションではそれが難しい。そこで可搬型蓄電池を活用すれば、マンション内で電力を貯め、蓄電池を持ち歩いてEVに給電できるようになる。

 コスト低減や啓発活動、ニーズを見越した製品開発などメーカーが取り組むべき事柄は山積している。だがカーボンニュートラルを実現するためには、蓄電池は必要不可欠な製品といえる。メーカーの売る努力や仕掛けが、これからの地球環境を左右するといっても過言ではない。

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