中部経済圏が最も懸念していたトヨタ自動車の国内生産の一時停止が決まった。その発表が行われる直前、愛知県下にある主力工場の一つ、高岡工場(愛知県豊田市)において従業員として2人目の新型コロナウイルス感染者が確認されたことも明らかにされ、県内では産業界を中心に激震が走った。1月下旬ごろから、中国をはじめとする輸出市場で新車需要の低迷が顕著となっている。トヨタはコロナ影響の広がりも鑑み、今回の国内工場の一時生産停止に踏み切った格好だ。
 日本経済成長を支える屋台骨ともいわれる中部経済圏。トヨタを中心とする産業チェーンの裾野は極めて幅広く、愛知県単体で稼ぎ出す工場生産出荷額は約47兆円にも達している。隣接する岐阜県、三重県などと合わせた伊勢湾経済圏で見れば60~70兆円と評されている。その全てではないものの、トヨタの下には、デンソー、豊田合成などの1次メーカーや2次・3次企業、化学関連の材料、工場関連の物流や資材ほか周辺産業が山のように連なっている。工場生産の一時停止がもたらす経済損失は極めて甚大だ。
 「どの工場が停止するのか」「その停止時期・期間は」といった詳細な内容は、すでに内外のメディアで伝えられている。一方で「(他の自動車メーカーとの比較で)1月ごろまで1日1万数千台規模の国内生産を維持してきた同社が『ついに』という感が否めない」(名古屋市内の自動車関連部材商社)との嘆息が漏れ「現在(九州工場の停止は)4月15日までと報じられているが、それ以上の長期化はなんとか避けたい」(愛知県下の樹脂部品関連メーカー)といった悲鳴に近い声が多く上がっている。
 トヨタが生産停止を発表する前に、愛知県や岐阜県など行政サイドは「コロナ影響による緊急対策」として低利で当座の事業資金を貸し出す金融支援策を始めている。銀行や信用金庫などで土日も申請を受け付けており、名古屋市内の一部金融機関には、土曜早朝から企業経営者ら数百名が長蛇の列を成した。トヨタの生産停止を受けて、愛知県では融資期限の見直しや第2、第3の企業支援策も検討され始めた模様だ。
 世界経済に多大な被害を及ぼしている新型コロナウイルス。巷間見渡すと各論・異論・議論さまざまあって喧しいが、ウイルスの感染拡大を封じ込めなければ抜本的な平常化はない。日本最大の売上高を持つ最大手企業であるトヨタの一時生産停止を、各方面に対し抜本対策を改めて促す端緒とすべきではないだろうか。

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