中部および愛知県を中心とする経済圏の回復基調が一段と鮮明になりつつある。トヨタ自動車は先ごろ、11月から来年1月末までの世界生産台数を策定、1次・2次・3次サプライヤーを含む部品や部材・材料各社へ生産計画を通達した。2020年4~9月のトヨタグループ全体の世界生産台数は前年同期比25・2%減と、新型コロナウイルスによる世界的な自動車販売減少が響いた格好だ。ただ11月から来年1月までの計画は前年同期比8・5%増の約233万台を設定した。同社は世界規模で生産回復を加速し、今夏終盤から秋にかけて市場回復が鮮明となった中国、そして欧米や日本・アジアと、市場全域で自動車生産・販売を拡大させる意向を明確に示している。

 これに連動するかたちで10月末、デンソー、アイシン精機、豊田合成、豊田自動織機などトヨタグループの主要8社の4~9月期決算発表が行われた。名古屋証券取引所での会見は、オンラインではなくリアル会見となった。会見室には全国各紙・専門メディアから「100名を超える」記者が集まった。会見トップバッターはデンソー。山中康司副社長が会見場の中央に陣取って発表した。業績見通しは据え置きとしたものの「次世代技術分野への投資・開発費は確保してやっていく」とし、成長領域への取り組みを推進すると明言した。

 トヨタグループ8社決算の概要は他紙などでも既報の通り、ジェイテクトを除いて7社が通期で最終黒字を見込んでいる。豊田合成、豊田自動織機、愛知製鋼ほか4社は通期見通しを上方修正すると発表した。主要取引先となるトヨタの自動車生産が今夏から回復傾向にあり、これに連動するものだが「当初の想定や予測した以上に、今年7月ごろから自動車生産の回復が愛知県内・中部地域で加速度的に進んでいる」(県内の合金・特殊鋼材を扱う企業)と、お膝元の地場企業からも、自動車産業のいち早い回復に歓迎の声が上がる。

 中部経済圏を管轄する中部経済産業局では、管内の化学などを含む鉱工業生産の動向を3カ月ごとにまとめているが「自動車は回復が鮮明。工作機械なども少しずつ良くなっており、一部だが半導体関連にも動きが出てきた」(同局関係者)とし、年内に、さらに回復ペースが速まるとみる。半導体関連ではキクオシア(旧東芝メモリ)が四日市工場(三重県四日市市)に1兆円を投じて新棟を建設することを発表した。自動車を筆頭に製造業がひしめく中部経済圏の回復が、日本経済を牽引することは間違いなさそうだ。続きは本紙で

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