神戸市が小売り、日用品メーカー、再資源化事業者(リサイクラー)と協働で、日用品の詰め替えパックの水平リサイクルを目指すプロジェクトを始動した。市内店舗に回収ボックスを設置、洗剤やシャンプーなど使用済みの日用品の詰め替えパックを分別回収して再び詰め替えパックに戻す。自治体と製造・販売・回収・再生に関わる複数の企業などが競合の垣根を越えて水平リサイクルを目指す全国に先駆けた試みとして注目を集めている。

 回収するのは洗剤、シャンプー、台所や住まいのお手入れ製品など日用品の詰め替えパックで、メーカーを問わない。詰め替えパックを洗って乾かし、市内各店舗に設置された回収ボックスへ持参してもらう。回収に協力すると、詰め替えパック1枚につき神戸市公式アプリ「イイことぐるぐる」ポイントが50ポイント(5円相当)付与される。

 回収した詰め替えパックのフィルム容器はリサイクラーにより選別され、花王の和歌山研究所(和歌山市)のパイロットプラントへ運ばれる。同研究所で再生処理を行い、リサイクル技術の研究開発を進めていく。また家庭から出るプラスチック容器包装の分別回収およびリサイクルの状況・課題を調査し、効果的な分別回収プロセスやリサイクルしやすい容器包装の設計などを検討しつつ、詰め替えパックの水平リサイクルの技術確立を目指す。

 詰め替えパックのフィルム容器は本体ボトルに比べてプラスチック使用量が70~80%削減されており、プラスチック使用量削減に大きく貢献している。しかし2020年度にリサイクル事業者に引き渡されたプラスチック製容器包装は、過去10年で最多の量を記録。コロナ禍による巣ごもり需要で家庭から出るプラスチックごみの増加が要因と考えられている。

 一方、詰め替えパックに使われるフィルムは、耐光性、シール性、防湿性、ガスバリア性など、さまざまな特徴を持つ複合素材で構成されている。ポリエチレンをはじめ多様な素材が使われており、中身の保護や薄さに貢献する一方、リサイクルの難易度を高めている。生活者が使用する製品としてリサイクルするには高い技術が必要となる。

 使用済み製品を資源に戻して元の製品と同じものにする水平リサイクルは、ごみ処理量削減だけでなく、生活者にとって社会に与えるインパクトが大きく循環型社会実現への強い駆動力にもなる。神戸のプロジェクトでは、フィルム再生技術の向上に向けて自治体、企業、市民が一丸となって課題解決に取り組んでいかなくてはならない。

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