九州を中心にした豪雨で日本は甚大な被害に見舞われた。中国でも6月以降、南部や内陸部を中心に豪雨で延べ3800万人以上が被災したとされ今後、北部の河川氾濫なども警戒される。化学産業も洪水によって物流が途絶するなど安全面への影響が懸念されるところ。こうしたなか両国外相がお見舞いのメッセージを交し、今後の緊密な連携を確認したことを歓迎したい。対話を通じた災害情報や知見の共有を期待したい。

 新型コロナウイルスに襲われるなかで自然災害が発生し、日中両国には二重のダメージとなった。両国政府ともに被災者の生活やなりわいの再建に向けた支援を急いでほしい。

 中国では湖北省や江西省、四川省など内陸部や南部で梅雨前線の影響による大雨が続き、被害が広がっている。長江流域や黄河上流など広範囲で洪水や土砂崩れが発生。応急管理部によると7月13日までに被害は全国27省市に及び、死者・行方不明者は140人超、被災者は延べ3800万人超とされる。国務院は今後、北部でも雨量が増えるとして全国で河川の氾濫や土砂災害、ダムの決壊などに警戒するよう呼びかけている。茂木敏充外相は、中国の犠牲者とその家族に対し哀悼の意を示し、王毅外相がそれに応えたことを現地メディアも報じている。

 化学産業に目を移せば、四川省や江西省などで工場の緊急停止などが報告され、化学品を積んだ車両が洪水で横転する事故も起きた。化学品の安全管理は日常はもちろん、自然災害への備えが欠かせないことを改めて浮き彫りにした。

 日中両国は自国の経験やノウハウを、もっと共有できるはずだ。日本では地震や豪雨に襲われた際、それまでの「警報」が必ずしも迅速な避難に結びつかなかった。それを教訓に一段上の「特別警報」を設けた。その一つが「大雨特別警報」。もっとも先般の豪雨では、それが機能したとは言い難い。線状降水帯は予測困難だが、降雨の急激な変化などのデータを蓄積し、予報精度を高めてほしい。

 中国国有の中国航天科技集団は、全地球測位システム(GPS)やビッグデータを駆使したスマート園区の設立を進めるに際し、省エネや生産・物流の効率化に加え、台風や災害などを含む防災の視点を採り入れた。リスク管理には災害への備えが必要と認識し、デジタル技術を積極的に導入する中国。日本が学ぶべきことは少なくない。

 コロナの感染抑制・新薬開発はもちろん、人々の命や生活を守り、さらには化学品生産の安全確保の視点からも、両国の情報共有の深化が求められる。

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