経済産業省の循環経済ビジョン研究会が報告書「循環経済ビジョン2020」をとりまとめた。1999年策定以来、20年ぶりの改訂となるもの。国内で進めてきた廃棄物の減容化を目的とする3R(リユース、リデュース、リサイクル)の総合的な推進から、資源の高度な循環利用を基軸とする経済活動としての循環経済への転換を謳う。すでに海外では、さまざまな国で施策検討が開始され、市場も生まれつつある。国内においてもビジネスリソースを活用した取り組みが求められる。

 新ビジョンでは、グローバルな経済社会の変化として世界的な人口増加と経済成長にともなう消費拡大を挙げる。国際的な資源需要は2015年の880億トンから60年には1900億トンに拡大するほか、ベースメタルの銅は30年までに需要量が供給量を上回るとの予想もある。またグローバルな廃棄物問題も課題だ。近年ではアジア諸国の廃棄物輸入規制により日本も影響を受けている。こうした要因に地球温暖化などの環境問題やESG投資の拡大などが加わり、循環型経済構造への転換は避けて通れない状況と説く。

 実現に向けては、動脈産業に対して軽量化や易解体性、再生材の積極利用といった環境配慮設計を通じた新市場創出や、シェアリングやサブスクリプションなど製品所有権を維持したかたちでの流通・回収モデルの構築などを例示した。一方、静脈産業には多様な使用ずみ製品の広域回収とともに自動選別技術などを活用し、規格化などを通じた高品位再生材の安定供給を実現することで動脈産業に供給するリソーシング産業としての役割を期待する。また循環システムの構築のために、ベースメタルやプラスチックなどの主要素材の中長期的な資源循環バランスの評価・分析をはじめ、リサイクル手法のベストミックス検討なども求めている。

 循環システムの検討が急がれる分野としてプラスチック、繊維、CFRP、バッテリー、太陽光パネルの5つを明記した。プラスチックでは代替素材のへの転換やケミカルリサイクルの検討といった取り組みの円滑化に向けた環境整備を、CFRPではリサイクル技術や再生された炭素繊維の評価手法などの開発推進とともに、欧州と連携したグローバルな循環システムの構築の重要性を指摘する。

 すでに企業単位では保有するリソースを活用した循環型ビジネスモデルへの転換に向けた取り組みが始まっている。企業・産業の枠を越えた社会モデルを早期に確立し、グローバル市場における競争力を強化していくべきだろう。

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