100年に一度の変革期にある自動車業界。CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の実現や、各国の環境規制強化を背景にEV(電気自動車)を中心に電動化が加速している。昨年はコロナ禍で新車販売が落ち込んだが、EVは大きく伸びた。とくに欧州と中国の販売台数が急拡大しており、日本の電池産業にも大きなチャンスとなりそうだ。

 2020年の欧州各国のEV販売は、ドイツが前年比3倍の19万4000台、英国は同2・9倍、フランスも同2・6倍となった。ノルウェーも同27%増加し、新車販売に占めるEV比率が54%に到達。補助金の増額などが販売を押し上げた。

 こうした急激なEVシフトを受けて欧州では、車載用LiB(リチウムイオン2次電池)のギガファクトリーが数多く計画されている。すでに拠点を持つLGエナジーソリューション、サムスンSDI、SKイノベーションの韓国勢はさらに供給を拡大。車載用LiBの現地メーカー不在だった欧州に電池のファウンドリーを目指すノースボルトが参入、今年新工場を立ち上げる。22年以降も車載LiB世界最大手のCATL(寧徳時代新能源科技)のほか、ファラシスエナジー(孚能科技)、SVOLT(蜂巣能源科技)など中国勢、23年以降には新興メーカーの参入も計画されている。

 世界最大の自動車市場である中国は、コロナ禍からいち早く経済が立ち直り、政府が20年に打ち切る予定だった補助金を22年まで延長したこともあり、20年の新エネルギー車(NEV)販売は136万7000台と前年比11%増加した。

 米テスラが上海に初の海外拠点を設けて、パナソニックやLG、CATLの電池を搭載した車の製造販売を開始している。独フォルクスワーゲンも、中国でEVの生産能力を拡大。電池調達はCATL、LGエナジーソリューション、SKイノベーションなど大手のほか、廉価モデルでは天津力神や国軒高科動力能源などのローカル中堅メーカーも採用している。

 欧州、中国市場における中韓電池メーカーの積極投資に対して、日本の電池産業の動きはあまり目立たない。車載電池で新興メーカーや中国の中堅ローカルが採用を得るには、高容量に加えて高い品質と安全性が不可欠だ。その意味では技術力・品質で世界をリードしてきた日本企業は優位だ。確かに中韓はじめ海外勢は大きな資金力を有し技術力も向上しつつある。しかし日本企業も、躍進するこれらの市場に果敢に挑み、電池や電池材料、それらの製造装置で新たな成長を果たしてほしい。

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