迅速で的確な情報発信は企業活動にとても重要だ。とくに危機下には情報発信力の真価が問われる。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界が危機の真っ只中にある。企業はそうした際に、どのように情報を発信しているのだろうか。

 欧米の化学企業は新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、自社のウェブサイトを積極的に活用している。「COVID-19」の表記がすぐ目に入り、各社の取り組みや社内外へのメッセージを簡単に把握できるようになっている。日本の化学企業と異なるアプローチである。

 社内外へのメッセージはCEO(最高経営責任者)が企業を代表して発信することが多い。生産活動などの最新情報を公開したり、新型コロナウイルスにかかわる自社のニュースをまとめている企業もある。

 ダウのジェームズ・R・フィッタリングCEOは、事業活動を安全で確実に続けることに加え、困難な状況にあっても、循環型経済やカーボンニュートラルといった世界的な課題を追求する勢いを失ってはならないと訴える。注目したいのは、今の危機に対処するために化学が欠かせない産業であることを決して忘れてはならないとし、人々の健康や環境を守るためのイノベーションを提供する化学産業を、世界はこれまで以上に必要としている、と強調している点だ。関係者に自覚と誇りを持つよう訴えているのである。

 コベストロのマーカス・スタイレマンCEOは、危機を乗り越えるための連帯の重要性を指摘している。社会の分断の広がりが懸念されるなかで、企業経営の責任者が連帯を呼びかけることは大切だ。

 イーストマン ケミカルのマーク・コスタCEOは動画で、日々の事業活動を支える社員とともに、人々の安全を守るために日夜奮闘するすべての人たちに「Thank you」と語る。世界各国の社員からの、それぞれの言葉による謝意が、これに続く。2分にも満たない動画だが、登場する人たちの思いが伝わってくる。

 ほんの数例を挙げたにすぎない。数多くの企業が新型コロナウイルスに関する情報を発信し続けている。社内外の人に勇気を与えるこうした情報のほか、事業環境が悪化したことから、業績見通しを取り下げたり、下方修正を発表する企業も少なくない。残念な発表だが、迅速で的確さが求められる企業の情報提供の一側面である。

 どのような状況にあっても時宜にかなった情報を提供することが企業には求められている。これからも、でき得る限りのことを実行して欲しいものだ。

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