化粧品業界で容器リサイクルに向けた動きが加速している。プラスチック廃棄物の削減を目指す「プラスチック資源循環促進法」が先月1日に施行された。環境負荷低減の社会的機運が一層高まり、環境に配慮した商品を選択する消費者が増えるなど購買意識にますます変化がみられるようになるはずだ。化粧品メーカーにとっても、今まで以上にプラスチック循環社会の実現に向けた取り組みが求められるなか、法施行のその日に始まった新日本製薬の展開に注目が集まっている。

 飲料に使用されるペットボトルのリサイクルシステムは確立されていたが、化粧品プラスチック容器のリサイクルは色や材質が異なるため、品質を保ったまま同じ容器に再生する水平リサイクルが難しいとされていた。新日本製薬は独自のシステムで直面する課題解決に挑んでいる。

 ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)素材の化粧品容器を全国の直営8店舗に設置した専用ボックスで回収。容器メーカーのツバキスタイル(東京都中央区)が新たに設立したBEAUTYCLE(ビューティクル、佐賀県神埼市)の協力を得て原料化し、再び同一の容器へリサイクルして商品化する。

 2023年1月の稼働を予定するビューティクルの工場では、米食品医薬品局(FDA)の認証を受けた機械を導入することで食品容器としても利用できる品質を実現し、より安心なリサイクル化粧品容器の製造につなげていくという。月間の処理能力はPPで150トン。洗浄から粉砕、再生までを一気通貫で行い、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)も確保する。

 SDGs(持続可能な開発目標)推進を掲げ、化粧品業界でもリサイクルのさまざまな取り組みが行われてきた。直近では、花王とコーセーが化粧品事業のサステナビリティ領域で包括的に協働することに合意。その第1弾である化粧品プラスチックボトルの店頭回収と再生化に向けた実証実験も話題になった。

 富士経済の調査によると、化粧品容器の国内市場は25年に21年比4・7%増の1389億円に達する見込み。エコ化の重要性が高まる市場で、今後はバイオプラスチック採用にとどまらず、リサイクル容易性といった観点での容器設計なども進むとみられる。

 新法の施行で、化粧品業界も、より本格的なプラスチックごみ対策が求められるのは確実だ。一方でプラスチックは軽く、丈夫で長期保存が可能な素材といえる。だからこそ他素材による代替ばかり考えるのではなく、使い続けられる仕組みを業界を挙げて築いてもらいたい。

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