米中間でハイテク技術を巡る対立が激しさを増している。先端分野で中国企業の排除を推し進める米国に対し、中国政府は電子部品産業の基礎開発力を高め、自国の産業チェーン延伸、強化を急ぐ方策を発表した。日本が得意とする産業の動向を注視していく必要がある。

 米国がバイデン政権に移行しても、制裁措置を含め、中国に対して厳しい態度で臨む姿勢に変わりはなさそうだ。バイデン大統領は外交方針演説で中国を「最も重大な競争相手」と名指しするなど、基本的な対中政策についてはトランプ前政権から継承する姿勢を示している。

 足元で米中の競争の主戦場は「技術開発」に移った。米国は華為技術(ファーウェイ)をはじめとする中国企業をエンティティリストに掲載して取引を制限。中国も輸出管理を強化するなど今後も応酬が続こう。

 こうしたなかで自国産業の保護・育成を狙って中国政府が発表したのが「基礎電子部品産業発展行動計画」だ。国を挙げて電子部品産業の発展を目指すもので、2023年までに電子部品の売上高を2兆1000億元(33兆6000億円)に引き上げる。現地報道によると、19年(1兆8600億元)比13%増加させる野心的な目標だ。基礎電子部品は、スマートフォンや5G(第5世代移動通信)、コネクテッドカー、航空・宇宙、工場スマート化などに欠かせない。急速に発展する国内エレクトロニクス産業の需要に応える体制を整え、輸入依存を打破するためにも不可欠な部材だ。

 中国政府は重点育成分野として半導体や磁石、センサー、プリント基板、光通信関連部品などを挙げた。これまで半導体の国産化を進めてきたが、ハイテク分野のサプライチェーンを拡充するべく、部品・素材の内製化にも大きく舵を切る。

 産業育成のため、国と地方政府は資金調達や人材育成に共同で取り組み、国際競争力を有する売上高100億元(約1600億円)規模の電子部品のリーディング企業を15社程度生み出すとしている。企業の合併や有力な企業の工場への金融支援なども積極的に行う。また重要技術の国際標準取得を進めていくと明記した。

 米中の「技術対立」は国を挙げた自国産業の保護、育成のステージに入り、特定の企業や製品への締め付け、規制が従来以上に強化される可能性がある。電子部品や素材の技術は日本のお家芸であり、中国のエレクトロニクス市場でも高い存在感を放ってきた。米中の電子部品競争の敗者が日本であってはならない。こちらも官民が連携して対応する必要があろう。

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