国土交通省主導で進める「Project PLATEAU(プロジェクトプラトー)」は都市3Dデータの公開を始めている。第1弾として東京23区を含む56都市が参加し、1万平方キロメートルに及ぶ都市空間データがデジタル上で再現された。同省では都市活動のモニタリング、防災政策、まちづくり、民間サービスなどへの活用を想定しており、高精度な都市開発や防災計画の策定から、ドローンや自動運転、映画やゲームなどのエンターテインメント分野まで幅広い活用が期待される。

 同プロジェクトは、国土地理院の2500分の1データを基に、空や地上から得た画像やLiDARデータで補完して都市3Dデータを作成。国土地理院の平面地図から建物の外枠を作り、高さのみのLOD1から建物内部を含むLOD4まで4段階のディテールのデータを作り順次公開している。公式サイトではデータの一部を使ってウェブアプリで試すことも可能で、賛同する企業の利用例も公開されている。

 スマートフォンのアプリなどで建物が立体的に表示された地図を利用したことがある人は多いだろう。これらはグーグルやアップルなどのIT大手が保有しているデータで、他者が利用する場合は費用が掛かり、加工できないといった制約がある。一方、同プロジェクトのデータは現状、これら企業のデータに比べシンプルで建物に貼り付けられたテクスチャーもあまりリアルではないが、誰でも自由に使えるメリットは大きい。

 都市3Dデータは3つのデータ形式で公開されており、国際標準規格でメインのCityGML形式のデータは、ビルの壁や床、屋上などの面が細かく分けられ、各施設の役割などさまざまな属性情報を含む。これを活用して解析やシミュレーションができるのも大きな特徴だ。建築情報モデリング(BIM)データの提供を受けている建物もあり、都市3Dデータに統合されている。

 データは個人でも利用可能で公開直後から富士山が見える建物のマップを作ったり、東京駅周辺をVR(仮想現実)化して公開している。

 ユースケース開発では都市活動モニタリングや避難訓練シミュレーション、街歩き・購買体験などの例が紹介されている。全国で整備が進めば、データの集合体である都市3Dデータのポテンシャルがさらに高まる。今後より多くの企業、自治体がこのデータの活用に取り組み独創的で優れたソリューションが開発されることで、さらなる経済や社会の活性化につながると期待する。

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