関西に本拠を構える化学関連企業が、2030年のありたい姿を描いた長期ビジョンを相次いで策定、公表している。いずれも重点に定めるのが「環境」。温室効果ガスを削減し循環型社会の実現に寄与するため、植物由来原料などを用いて高品質・高機能な製品を生産する技術の確立や、環境に配慮した製造プラントの構築などに挑む。

 日本触媒は、バイオマス原料を使った酸化エチレン(EO)やアクリル酸(AA)を事業化させる。複数の方法を検討しているが、力を注いでいるものの一つが多収性サトウキビ由来原料の活用。製糖時の副産物である糖蜜を発酵させて得られるバイオエタノールやバイオブタノールを利用してバイオエチレン、バイオプロピレンなどを作り出せるよう研究開発に励む。30年までに商業生産を始めたい考え。実用化できればバイオエチレンからバイオEO、バイオプロピレンからバイオAAの製造へとつながる。

 三洋化成は既存技術、製品も活用し、カーボンニュートラル(CN)に貢献する。実現を目指しているのが、イオン液体を使用して二酸化炭素(CO2)を回収・利用・貯留するシステム。イオン液体はCO2を吸収する能力に優れる。加圧・減圧するだけでCO2を吸収・放散でき、熱エネルギーを必要としない。三洋化成は、すでにCO2回収に適したイオン液体を開発済み。プラントメーカーと共同で早期にシステムの実証に着手する考え。

 新日本理化は、バイオマス製品の拡充に努めている。現状、全製品のうちバイオマス製品の割合は、パーム油やパーム核油を原料に用いるオレオケミカルを中心に30%。これを現5カ年中期経営計画の最終年度に当たる25年度には40%、30年度には50%に引き上げる。100%植物由来の潤滑油を開発するなど取り組みは進展。採用実績を積み重ね、目標を達成する。

 新日本理化は工場も環境に配慮した拠点へ進化させる。1919年の創業時からモノづくりを続ける京都工場(京都市伏見区)をCN工場に作り替えようとしている。動力源に再生可能エネルギー、原材料をすべて天然素材に代替するといったことを検討しており、具現化させる。

 「環境」以外にも共通している話題がある。それは「オープンイノベーション」だ。素早く、激しく変化する状況に「自前技術だけで対応することはできない」と各社、異口同音に言う。関西の企業が主体となり、特異な技術、製品を持つ他社や大学などと共同しながら、環境にかかわるソリューションを生み出してくれることを期待したい。

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