関西の有力化学企業がライフサイエンス分野で新製品・新技術を相次いで発表している。少子高齢社会における疾病の予防・治療や生活習慣病対策が大きな課題となるなかで、研究開発を活発化させているもの。ヘルスケア、化粧品といった成長分野で新たな事業を創出する一方、人々の健康寿命延伸やQOL(生活の質)向上に貢献しつつ企業価値を高めるのが狙いだ。

 大阪ソーダは、静岡大学工学部の吉田信行准教授との共同研究で、抗老化物質として近年注目されているニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を産生する乳酸菌を、世界で初めて発見した。乳酸菌内で効率的にNMNを蓄積させる方法と、NMNから生合成されるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を高蓄積させる培養方法を確立した。NADは生体内でエネルギー代謝を活性化させる重要な化合物。NMN乳酸菌は、腸内環境の改善をはじめとする乳酸菌本来のさまざまな生理活性に加え、NMNおよびNADの効果を併

せ持ち、化粧品原料や新たなニュートラシューティカルとしての展開が可能という。
 第一工業製薬は、同社の健康食品「カイコハナサナギタケ冬虫夏草」をリニューアルした新商品「天虫花草」を販売開始した。一般的に冬虫夏草は、アミノ酸など多種の栄養素が含まれるスーパーフードといわれ、古来から滋養強壮などで珍重されてきた。同社の冬虫夏草はたんぱく質を豊富に含むカイコのサナギを栄養源としている。さらに同社のグループ会社のバイオコクーン研究所(盛岡市)が、カイコハナサナギタケ冬虫夏草から新規の有用成分「ナトリード」を発見、ヒトに対する臨床試験を進めている。

 MORESCOは、業界最小レベルという乳化粒子径を実現したナノエマルジョンの用途開発に力を注いでいる。ナノエマルジョンは、脂溶性の機能成分を皮膚や小腸などの細胞の隙間から効率よく浸透させることができる。ビタミンEやコエンザイムQ10といった難水溶性の化合物をナノサイズの透明な乳化水溶液とすることで、高い経口吸収性および経皮吸収性が期待される。化粧品用途では有効成分の高い浸透性、機能発現の向上が図れる。化粧品以外でも医薬品用途での応用が期待されている。

 ライフサイエンス分野は研究開発の進展が速く、競争も激しい。ただ将来の安定成長や企業価値向上には同分野の事業育成・拡大が不可欠となる。景気の変動に左右されない強固な事業基盤を構築する一方、新素材・新技術を提供し続けることで豊かな社会作りに貢献してもらいたい。

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