今回のコロナ禍によって、世界は未曾有の経済的打撃を受けている。わが国の基盤産業である自動車も、トヨタ自動車の2021年3月期予想が営業利益約8割減などと大変に厳しい状況が続く。デンソー、アイシン精機などトヨタグループ8社の20年3月期決算も全社減収。反転回復がいつになるか、いまだ明確に見えない。名古屋市を中心とする中部経済エリアにおいて産業チェーン全体で「数百万人規模の雇用」といわれる自動車産業。その死守に向けて各社は奮闘を続けており、少しずつだが光明も見え始めている。

 5月連休明けで一斉に始まった自動車および部品各社の20年3月期決算は、新型コロナウイルスの感染拡大が直接響く結果となった。トヨタは5月中旬、コロナによるグローバルな新車需要低迷を背景に、6月の世界生産において当初計画の3割に当たる約23万台の減産を行う方針を発表した。

 うち国内の生産拠点では、当初計画比約4割の減産措置を5月に続いて6月も行う。5月半ば、中部経済エリアの自動車向け素材や部材を扱う各社も「なんとか7月ごろには底が見えてほしい」(名古屋の樹脂関連を扱う化学品商社)、「(設備投資の延期・中止で)今夏から秋にかけての受注がストップ」(自動車工場向け機器メーカー)など減産措置による直接的な影響に懸念は深まる。

 ただ先のトヨタのオンラインによる決算発表で豊田章男社長は「グローバルなトヨタの活動において国内工場の生産や国内における技術開発などはすべての基本」と、トヨタの源流でもある国内事業は雇用を含め死守する考えを強調した。国内の自動車生産採算ライン「年間300万台」を守り抜く覚悟も、改めて内外に示した格好だ。

 多くの上場企業が今回の新型コロナの影響によって21年3月期の数字を未定としたなか、トヨタは連結売上高予想として24兆円、世界自動車販売台数も800万台レベルと具体的な数字を掲げた。今月に入ってトヨタは、7月の国内生産台数を月産24万台前後とする計画を早々に発表。当初計画比で約2割減だが「少なくとも5月より減産幅は縮小してきている」(岐阜の樹脂加工メーカー)。この状況下、明確な数字により先が少しでも見通せるため、関係各社は大変に心強いだろう。

 中部エリアでは6月から7月を底に「自動車産業の反転回復の兆し」という観測も徐々に聞かれ始めた。むろん予断を許さない状況だが、その都度、具体的数字を示すトヨタの姿勢は、この状況下で学ぶべきやり方の一つとはいえまいか。

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