非鉄製錬メーカーで構成する日本鉱業協会がカーボンニュートラルの実現に向けた具体的施策をまとめた。対策領域として(1)リサイクル処理原料拡大(2)中長期の革新的技術課題(3)他産業と協働したカーボンニュートラルへの貢献(4)再生可能エネルギー・植林等によるCO2吸収(5)マテリアルフロー情報の整備・ライフサイクルアセスメント(LCA)の検証-を定めるとともに22テーマを設定した。このうち、とくに3つのテーマを優先して取り組むとし「バイオ・廃プラ等脱炭素に資するエネルギー源を利用した非鉄金属リサイクル促進技術の開発」「製錬所等における徹底した省エネ実現のための熱電素子・新エネルギーストレージ材料等の開発」「非鉄金属リサイクルを念頭に置いたマテリアルフロー分析とLCAのデータベース確立と発信」に着手する。カーボンニュートラル実現には積極的な産業連携が不可欠であり、企業・業界の枠組みを越えた取り組みが期待される。

 非鉄金属業界は、鉱物資源の獲得および、その製錬、精製、加工を通じて非鉄金属材料を供給している。また、これまで培ってきた種々の生産技術を活用して新材料の開発や資源リサイクルの推進、地熱エネルギー開発の促進といった地球環境の保全に取り組んでいる。昨年10月の「2050年カーボンニュートラル実現」の政府方針に対して、今年2月に協会内に「カーボンニュートラル推進委員会」と「革新的技術開発ワーキンググループ」を設置して検討を進めてきた。

 設定された22のテーマには「レアメタル等未回収元素の回収技術の開発」などリサイクル拡大に向けた取り組みをはじめ「製錬プロセスの熱・生成物を利用した水素製造技術及び化石燃料・還元剤の代替のための水素バーナー技術等の開発」や「製錬工程等からの排出CO2のCCS・CCUS技術の開発」といった革新的技術課題、「廃プラの代替燃料化、ケミカルリサイクルの推進」など他産業との協働による対策が盛り込まれている。またバイオマス発電など廃棄物エネルギーの拡大や、坑内水を利用した小水力発電なども推進する。

 優先して取り組む3テーマのうち、熱電素子・新エネルギーストレージ材料の開発では、排熱の有効利用のための化学蓄熱材料として「単位重量当たりの蓄熱量は少ないがヒステリシスが小さくレスポンスが早い」ことを技術ポイントに取り組む。3テーマとも研究会を設置し、将来の大型プロジェクト化も視野に入れる。産業構造の歴史的転換点にある今、自ら土俵を変える積極性が試される。

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