食品ロスの削減の推進へ向け法整備が2019年10月に行われ、約2年が経過した。昨年3月には基本方針が策定され、都道府県や市町への推進計画策定の推奨、事業系食品量を00年度比で30年度までに半減すること(食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針を同じ目標)が盛り込まれた。事業者、家庭、行政が地域・自治体ごとの共通基盤を構築し、一丸となって総合的に進めないと大きな効果は期待できない。都道府県をまたいだ連携や政令指定都市を中心に、イニシアチブを発揮してもらいたい。

 消費者庁の調べによると、20年度地方公共団体の食品ロス削減取り組みは、1722自治体の100%が実施。ただし、その内容は「住民・消費者への啓発」が全体の半数となり「こどもへの啓発・教育」「飲食店での啓発促進」が上位に並んだ。肝心の推進計画の策定は約7割で、そのほかは策定の予定がない(未回答78団体除く)。

 一方、コンビニなど事業者の対策は進んでいる。長年、食品ロス削減を妨げてきた大きな要因が、サプライチェーンでの賞味期間3分の1以内で小売店舗に納品する商慣習「3分の1ルール」。賞味期間の3分の1以内で納品できなかったものは期限前に捨てられてしまう。コンビニ大手は、この2年間に「2分の1ルール」へ改め、公正取引委員会による調査・要請もあって小売店自らの値引き判断も進んだ。しかし削減効果を一層高めるには、さらなる小売店の意識改革が必要だ。

 また惣菜などの販売期限の延長を可能とするフィルムによるトップシール包装や、ガス置換包装(MAP)といった包装を、販売業者ごとの採用ではなく、流通全般に行き渡らせるべきであろう。大都市を抱える地方自治体には、それらのシステム化を主導する活動が求められる。化学・プラスチック加工業界からも三井・ダウ ポリケミカルの「ハイミラン」、住友ベークライトの「P-プラス」、中央化学の「Ever Value」、凸版印刷の「GL FILM」など、革新的包装加工技術を使った製品のソリューション提案を強化し、市場拡大につなげてほしい。

 11月にデータ更新した農林水産省の調査では、納品期限緩和に年月や日まとめの賞味期限表示に切り替えた大手食品メーカーは223社。SDGs推進を掲げる企業が多いが、中小食品企業による実施をどのようにするのか、課題が残る。地産地消やフードバンクなどと食品ロス削減が有機的につながった自治体の活動がカギとなる。事例を揃えて、共通基盤のあり方を国が示すことが求められよう。

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