9月に米国ニューヨークで開催予定の「国連食料システムサミット」(FFS)に向けて6月下旬、日本の産学官消が一堂に会した全体対話会合が行われた。FSSは「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成には持続可能な食料システムへの転換が必要不可欠」というグテーレス国連事務総長の考えに基づき開かれる。日本の目指す持続可能な食料システムの姿を表明するとともに、開催支持を表明している企業・団体などの考えや意見を農林水産省がまとめ、サミット前に日本から報告することになった。日本の取り組みが持続的な食料システムの転換に大きく貢献することに期待したい。

 現在の世界の食料システムは、見えないコストがかかり過ぎているという。世界の食料消費が10兆ドルだとすると、健康被害、環境被害への影響など顕在化してないことも加えると全体で12兆ドルかかっていると考えられている。また温室効果ガスの25%が食料システムから発生している。地球の環境問題と食料システムは切り離して考えることはできない。2030年までにSDGsを達成するための「行動の10年」に入り、経済システムを変えないといけないという問題意識から、FSSが開かれることになった。

 FSSでは、生産から消費に至る食料システムに関する5つのテーマについての具体的な行動が議論される。今の期間は、世界のさまざまな地域で国内対話による議論が進んでいる。日本では農水省が50回近い国内対話を実施し、総まとめとなる対話会合でUCC、明治、林原、双日、不二製油グループ本社など13企業・団体がコミットメントを発表した。明治が26年度までにサステナブルカカオ豆の調達比率100%を、水産分野では双日が適切管理漁業を証明するMSC認証取得の刺身マグロの世界でリードすることを、不二製油グループ本社では30年までにパーム農園までのトレーサビリティ100%を確立を目指す。サステナブルを価値と認識し、供給側から消費者まで共有し、正しく取引されることも必要である。それは企業の新ビジネス機会にもつながる。

 農水省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するために策定した「みどりの食料システム戦略」などの取り組みを踏まえ、目指す食料システムの姿を示した。7月までに60以上の企業・団体がFSS支援のコミットメントを表明している。多くの食料を海外に依存する日本は、公正で自由な食料サプライチェーンの強化、食料システムの抱える課題に積極的に取り組むことが求められる。

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