わが国の工業・商業の振興と富国の礎として、明治年間に入って商法会議所(商工会議所の前身)が東京や大阪に続々と誕生。そのなか明治14年(1881年)3月、今日の名古屋商工会議所の始まりとなる「名古屋商法会議所」(初代会頭・伊藤次郎左衛門いとう呉服店<後の松坂屋>当主)が設立された。同商議所は今年3月、設立140周年の節目を迎えた。わが国最大規模の工業生産出荷額を誇る愛知県を擁し、中部経済や産業界全体を支えながら、行政との調整など地域産業振興に役割を果たしており、その位置づけは一段と重要になっていくことだろう。

 名古屋商議所の企業会員は約1万8000社。会員数でみると日本国全体の商議所中7位前後(毎年上下するため)だが、自動車をはじめ機械、金属や樹脂加工などを中心とする厚い層の産業チェーンを持ち、工業製品の出荷額では群を抜く。

 「モノづくりの名古屋」という表現が、よく使われている。名古屋商議所の中興の祖と称される奥田正香第6代会頭(1893~1913年)が「名古屋を東京や大阪に匹敵する産業都市へ」との想いから、近代的な商工業の街への変革に辣腕を振るったという。奥田会頭の前後に、国際貿易港の開港や鉄道誘致など今日の愛知県における産業的な基礎が築かれ、その後に名古屋は当時でいうところの航空機産業、樹脂や金属加工などの産業が集積した。それらモノづくりのDNAを愛知県は脈々と受け継いでいる。新型コロナウイルス感染症の拡大により経済的な打撃を受けたものの、いち早く回復軌道に入り現在、自動車を中心に昨年以上の活況を呈する分野もあるほどだ。

 そのなかで140周年を迎え「従来型の産業振興や企業支援からニューノーマルに対応する新たな商工会議所へ」との基本戦略に沿って2025年までの中期計画を策定し、このほど公表した。管内や会員企業に対する従来型の支援事業をリニューアル。企業支援、地域振興、社会課題解決の3つの取り組みを軸にデジタルとリアルを融合させた「ハイブリッド企業支援」に重点を置く。リアル・オンラインともに企業支援体制を大幅に拡充、今年に入って事業資金などの調達にクラウドファンディングセンターも設立した。

 これ以外に、カーボンニュートラルや水素社会実装に向けた数多くの実証プロジェクトも検討している。「社会的課題の解決に商工会議所として、より踏み込んだ活動」を推し進める予定だ。140周年を契機に“変わる”名古屋商工会議所。その動向に注目したい。

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