製造業各社で業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいる。生産に関するさまざまなビッグデータを分析・可視化し、生産性の向上、品質の安定化を実現するのが狙いだ。また生産現場のみならず研究開発、販売、管理、物流にいたる、すべての業務プロセスでデジタル技術を導入しようとしている。新型コロナウイルス感染拡大によるテレワーク推奨や、出張など長距離移動の制限が、その動きに拍車をかけている。大企業から中堅までデジタル化に着目し、ビジネス変革に取り組み始めている。

 DXの推進でデジタル人材の育成が大きなカギを握るなか、データ関連人材の育成に本腰を入れているのがサカタインクスだ。ビジネスにおけるデータサイエンス分野の向上を目的として、滋賀大学と連携・協力に関する協定を締結した。日本初のデータサイエンス学部を創設した滋賀大学は、デジタル分野でトップクラスの知見・ノウハウを有しており、有能なデータサイエンティスト輩出を目指している。サカタインクスは産学連携の取り組みを通じて、ビッグデータ・オープンデータの分析にかかわるノウハウの蓄積や人材育成、社会人教育を促進。ビジネス分野におけるさまざまな課題解決に向け、従来の発想にとらわれない創造性に富んだ人材を育成する考えだ。

 第一工業製薬は、デジタル技術を駆使し国内全工場のスマート化に取り組んでいる。最新鋭の自動化設備を導入し生産性が高い工場では、ビッグデータ解析やシミュレーター、画像解析、AI(人工知能)技術によるプロセス改善を実行中だ。一方、そのほかの工場においては、安価なIoT(モノのインターネット)を導入した製造データの「見える化」や、クラウドの環境整備による生産効率の改善を図るなど、各製造拠点に適したスマート化を進めている。

 神鋼環境ソリューションは、プロセス機器事業部の生産拠点である播磨製作所(兵庫県加古郡)でDXを推進中。グラスライニング製機器などの運転状況や出荷前検査をオンラインで実施する体制を整えた。IoTを駆使した「リモート立会」を実現することで新型コロナ対策につなげる。

 昨今の働き方改革の推進も追い風となり、新型コロナが収束した後も、デジタル化の流れが止まることはないだろう。しかし、どのようにしてDXに着手していけばいいのか分からないという企業も多い。「デジタル化疲れ」しないよう、まず自社の課題を正確に把握し、取り組みやすいところから着実に実行することが近道となる。

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