国土交通省は、昨年末に「次期総合物流施策大綱」の有識者検討会の提言をとりまとめた。今後取り組む施策として(1)物流DX(デジタルトランスフォーメーション)や物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(「簡素で滑らかな物流」の実現)(2)労働力不足対策と物流構造改革の推進(「担い手にやさしい物流」の実現)(3)強靱で持続可能な物流ネットワークの構築(「強くてしなやかな物流」の実現)-の3つを掲げている。

 労働力不足対策や大規模災害などでも途絶えない物流ネットワークの強靭性・持続可能性の確保といった施策は、現大綱で行ってきた取り組みと大きく変わった印象はないが、次期大綱は新型コロナウイルスへの対応を中心に据えた物流産業におけるDXの推進が目を引く。

 確かに物流は配送先、荷量、品目、荷姿が毎回異なるなど機械化やデジタル化が難しい側面がある。また現場のスキルやノウハウが高く、機械やデジタル技術に頼らずともクオリティーを維持できていたが、コロナ禍によってDXを積極的に推進できる環境となった。

 提言では、非接触・非対面型の物流への転換が喫緊に求められると指摘している。例えば、これまで物流効率化や省人化を目的として導入されてきた輸配送や庫内作業用のロボットは今後、非接触・非対面という観点から普及促進が図られる可能性がある。

 また物流の現場では、書面手続きや対人・対面によるプロセスが多いが、デジタル化による作業プロセスの簡素化や汎用化によって非接触・非対面型物流を構築できる。これまで個人の経験や既存の商慣習・様式に依存してきた物事をデジタル技術を駆使してさまざまなデータを可視化し、対人・対面によらずとも共有できるようにすることは、作業プロセスの汎用化を通じた多様な担い手の確保や、検品レスをはじめとしたプロセスの大幅な合理化を促すきっかけにもなり得る。

 さらに提言では、DXを推進するためには標準化が必要としている。これまではさまざまな商慣習のため、物流標準化は進捗を得られない面もあったが、物流に対する関係者の危機感が増すにつれ、多様な業界で具体的な取り組みが進みつつあり、全体的な機運も高まっているという。

 提言は春ごろに閣議決定する予定だ。こうした物流のあり方を変革する取り組みを総称する「物流DX」によって物流の優位性が高まり、国際競争力の強化につながっていくことも期待したい。

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