見聞きしない日はないほど「SDGs」(持続可能な開発目標)という言葉が社会に浸透しつつある。SDGsには17の目標が定められ「気候変動に具体的な対策を」をはじめ地球環境保全、改善に関する項目が複数設けられている。ただ、ますますグローバルで経済活動が活発化していくなか、現状の取り組みを推進させるだけではパリ協定などを達成するのは困難という声も上がる。地球を守る活動と経済発展を両立させるためには新しい技術、新しいソリューションが不可欠だ。

 注目されているものの一つがマイクロ波化学(大阪府吹田市)のマイクロ波技術・ソリューション。電子レンジでお馴染みのマイクロ波は、目的とする物質に分子レベルで直接エネルギーを伝えられ、内部から急速に加熱できる。化学品プロセスで使用すれば反応釜全体を温める必要がなく、反応時間の短縮が可能。生産効率が向上、収率を高められるうえ、省エネルギー化によってCO2などの排出量削減につながる。

 脱炭素社会や循環型社会の構築といった流れが勢いを増すなか、同社への注目度は以前にも増して高まっている。これまでも、多様なテーマで各社と事業化計画を進めてきたが、新たに三菱ケミカルおよび、その子会社の三菱ケミカルメタクリレーツと、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のケミカルリサイクルの事業化を目指すと標榜するなど、近年は環境関連のプロジェクトが増えている。

 マイクロ波化学は、2021年6月に「C NEUTRAL 2050 design」を公表、カーボンニュートラルの実現に貢献するという旗幟をより鮮明にした。太陽光、風力などを活用して生み出す再生可能エネルギーによる「電化」と、電気を用いたエネルギー伝達手段である「マイクロ波」を組み合わせることで、化石資源由来の従来の製造プロセスに比べ、90%以上のCO2排出削減が可能になるという。「ナフサやエタンから各種化学品の基礎原料を作るクラッカー」「天然ガス由来のメタンからCO2を発生させずに水素を得るターコイズ水素」「ケミカルリサイクル」の3つを中心に導入を促す。50年までに日本で30%、世界で10%の製造プロセスに適用。日本で年間1億トン、世界で同10億トンのCO2を削減するのが目標だ。

 マイクロ波化学以外にも、SDGsの達成を支える技術の開発が国内外で盛んに行われている。今後、大手企業やベンチャー、スタートアップから環境保全、改善に資する革新的な技術、ソリューションが次々と創出されることを期待したい。

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