代表的な難燃規格であるUL認証に関する不正行為が頻発している。東レは1月、ABS樹脂やエンプラについてULが定める難燃性の評価試験で、指定されたグレードとは異なるサンプルを意図的に提出していたことを公表。その後、有識者調査委員会を設置して調べた結果、UL認証取得数410品種中122品種で不適正行為があり、一部では1980年代後半から不適正行為を行っていたと推察され、92年には不適正行為を行った記録が残されていた。

 東レが会社として行為を認識したのは、2021年12月だが、内部的には17年に当時の樹脂・ケミカル事業本部長まで報告が上がっている。問題解消へ対象製品の代替素材開発も進めたが、コスト、物性の面で満足のいく開発は難しく、供給責任の都合もあって宙に浮いていた。これらの行為は不適正行為を問題視しつつも、内々で処理しようとする動きとみなさざるを得ず、17年の自動車用タイヤコードのデータ書き換え問題発生時にも隠し通されてしまったという意味で問題は大きい。

 一方で別の見方もあるのではないか。東洋紡は20年および21年、各種エンプラ製品についてULに関する不正を発表。PBT樹脂は事業譲受元のDIC時代からの不正を引き継いだものだったが元来、東洋紡の扱いだった樹脂でも問題が発覚している。京セラも昨年、注型レジンなど6製品の不正を発表したが、買収前の東芝ケミカル時代から不正が続いていた。DICでも昨年、LCPの一部製品でUL認証が取り消されている。三菱電機では昨年、電磁開閉器関連の一部部品で、ULに認証登録された樹脂材料と異なる材料の使用が社内調査で判明している。多数の企業で不適正行為が行われていたことを考慮すると、認定や、その後の検査の仕組み自体に問題があるとも考えられる。

 UL規格は主に電気製品の安全性に関するものだが、産業機器や自動車部品にも広がっており、認証取得が必須の用途も多い。認証取得後も抜き打ち検査により性能確認が行われているが、今回の東レのように別のサンプルを用意したり、該当材料に難燃剤を足したりする「隙」があるともいえる。採用後、速やかに販売を開始するため開発中から申請した結果、当初から処方が異なる状態の製品もあったようだ。日本にそんな会社はないと信じたいが、もしも組織ぐるみで不正を働こうとする会社があれば防ぎようがない。各社における一層のガバナンス体制強化はもちろん、そもそも不正の入り込む余地をなくすために何ができるのか、業界一丸となって考えてもらう必要がある。

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