★旭化成

 旭化成の2021年4~6月期決算は営業利益が前年同期比2倍の605億円と同期間として過去最高となった。石油化学製品の市況上昇や自動車関連製品などの販売が拡大した主力のマテリアル領域を中心に、3つの事業領域全てが増収増益を確保した。

 売上高は28・2%増の5834億円、純利益は3・4倍の464億円で、いずれも同期間として過去最高を更新した。

 営業利益が3・6倍の321億円と大幅な増益となったのが素材事業を束ねるマテリアルセグメント領域だ。石化製品の需要回復に伴って基礎原料アクリロニトリル(AN)などの市況が上昇。ANの4~6月期のスプレッド(製品と原料の価格差)は1トン1640ドルと前年同期(346ドル)を大きく上回った。ほかにもリチウムイオン2次電池(LiB)用セパレーター(絶縁膜)が車載と民生の両方で販売を伸ばし、合成ゴムなどの自動車関連製品、電子材料も収益貢献した。

 住宅領域は新たに連結子会社化した豪州住宅会社など海外事業が好調で、ヘルスケア領域は自動体外式除細動器(AED)などが販売を伸ばした。

 併せて、21年4~9月業績予想も見直し、売上高は前年同期比21・1%増の1兆1980億円、営業利益は38・1%増の1060億円と従来予想を490億円、175億円それぞれ上方修正。同期間として過去最高になる見通しだ。セパレーターは設備増強の効果もあり前年同期比2割の伸びを見込んでいる。

 前期計上した米製薬子会社ベロキシス社再編に伴う税金費用軽減分(約240億円)の計上が下期にずれ込む関係で、純利益は720億円と従来予想を150億円下方修正した。

 一方で通期業績は営業利益を1900億円とする従来予想を据え置いた。工藤幸四郎取締役常務執行役員は「新型コロナや半導体不足などの不確定要因はあるが、ファンダメンタルズは毀損していない」とし、「下期も順調に推移すれば、営業過去最高益(2096億円)が目指せる状況にある」と語った。

★帝人

 帝人の2021年4~6月期決算はコロナ禍からの経済回復やヘルスケアの大型投資効果で、営業利益が前年同期比37・1%増の173億円と順調な滑り出しをみせた。売上高は同26・1%増の2259億円。営業利益増と、前年同期の税負担率が高かったことを受けた純利益は同72%増の98億円となった。

 売上高をセグメント別にみると、マテリアルはアラミド繊維や炭素繊維などの全事業分野で販売量が前年同期比で増加し同419億円増の958億円となった。販売量が伸びたほか、原料価格高騰の影響で販売価格改定を進めた樹脂事業がとくに牽引した。ヘルスケアは武田薬品工業から取得した2型糖尿病治療薬4剤の販売などが寄与し同97億円増の459億円だった。繊維・製品は同61億円減の655億円。自動車関連無事や半導体・電子部品用途の化成品といった産業資材は好調だったが、医療用防護具の官需収束が響いた。

 通期目標は第1四半期の順調な進捗を勘案し、売上高を300億円増の9000億円に上方修正。営業利益600億円、経常利益600億円、純利益350億円は据え置く。

★三菱ガス化学

 三菱ガス化学の2021年4~6月期決算は、メタノールなどの市況上昇やコロナ禍からの需要回復などを受け増収増益となった。売上高は1600億円(前年同期は1335億円)、営業利益は146億円(同79億円)、経常利益は185億円(同101億円)、純利益は143億円(同68億円)。経常利益の増益にはエンプラ関連会社などからの持ち分法利益増も含む。収益認識に関する会計基準を適用したことで前年同期比増減率は表示していない。

 セグメント別の利益は基礎化学品が81億円(同8億円)で、機能化学品が74億円(同76億円)。基礎化学品はメタノール市況の大幅上昇やMXDAの販売数量増などから増収増益で、旧セグメントの天然ガス系化学品は黒字転換した。機能化学品は半導体パッケージ用材料などが好調だったものの、光学樹脂ポリマーが在庫調整の長期化により大幅な減益となった。

 4~6月期の好調を受けて上期および通期の業績予想を上方修正した。通期売上高は前回予想比3・1%増の6600億円、営業利益は同4・2%増の500億円、経常利益は同8・9%増の610億円、純利益は同9・8%増の450億円を見込む。また、今期中間配当に10円の創立50周年記念配当を加え、合計45円の中間配当を実施する方針とした。

★デンカ

 デンカの2021年4~6月期決算は、5G通信やxEV関連の伸長により大幅な増収増益となり、営業利益は第1四半期として過去最高益を更新した。足元の好調は今後も続くと予想され、上期業績を上方修正してすべての利益段階で上期として過去最高を更新できる見通しとした。4~6月期の売上高は前年同期比13・8%増の867億円、営業利益は同76・0%増の77億円、経常利益は同50・1%増の75億円、純利益は同46・9%増の61億円。

 セグメント別で大きく営業増益に寄与したのは、販売の伸長著しい電子・先端プロダクツ(同16億円増)とスプレッドが改善したポリマーソリューション(同13億円増)。エラストマー・インフラソリューションは原燃料高騰とセメント需要の低迷により2億円の減益だった。ライフイノベーションは3億円の増益。

 全般的な需要回復およびスペシャリティ事業の伸長を受け上期業績を上方修正した。売上高は前回見通し比5・7%増の1850億円、営業利益は同15・8%増の220億円、経常利益は同17・6%増の200億円、純利益は同15・4%増の150億円。通期見通しは精査中として修正を見送ったが、「上期業績を含め、さらなる上振れを期待している」(林田りみる執行役員経理部長)という。

★日本触媒

 日本触媒の2021年4~6月期決算(IFRS適用)は収益が大きく改善し、成長軌道に復帰した。アクリル酸およびアクリル酸エステル、自動車塗料用特殊エステルなど既存製品の多くが市況が回復するとともに、販売数量を伸ばした。

 売上収益は前年同期比36・7%増の860億円、営業利益は同347・6%増の66億円、税引前四半期利益は同213・4%増の81億円、四半期利益は同241・4%増の58億円。

 この調子が続くとみて通期業績予想を上方修正した。売上収益3250億円、営業利益220億円、税引前利益240億円とした。

★チッソ

 チッソの2021年4~6月期決算は、営業利益が12億円(前年同期は3100万円の黒字)だった。液晶材料を手掛ける機能材料などが堅調に推移した。

 売上高は前年同期比11・7%増の339億円、経常利益は19億円(前年同期は2億円の経常損失)。また、8300万円の純損失(同15億円の純損失)を計上した。

 4~9月期業績予想のうち、売上高を同2・9%増の636億円、経常利益を同325・7%増の53億円に上方修正した。JNC石油化学が35%を出資する日本ポリプロの事業売却で、営業外収益が発生したことなどが要因。オクタノールなど化学品が海外市況で高騰していることなどから通期業績予想を取り下げ「未定」とした。

 日本ポリプロが三菱ケミカル完全子会社の日本ポリケムに海外グループ株式を売却したことで、持分法による投資利益28億円を計上した。また、希望退職制度に関わる費用として11億円を特別損失として計上した。さらに、韓国での有機EL合弁会社設立に関し、特許と商権を合弁企業に譲渡したことで7億円の特別利益を計上した。

★大阪ソーダ

 大阪ソーダの2021年4~6月期決算は各利益で過去最高となった。営業利益は前年同期比57%増の30億5700万円。売上高は214億3500万円と同7・8%減少したが、収益認識会計基準などを適用したことによる減収影響が68億2700万円あり実質的には増収だった。

 基礎化学品ではクロール・アルカリが新型コロナ感染症拡大の影響から需要が回復し売上高が増加。エピクロルヒドリンも電子材料関係を中心に需要が回復したほか、原燃料価格上昇分の製品価格への転嫁が進んだ。機能化学品では自動車生産台数の回復によりエピクロルヒドリンゴムが増加。ダップ樹脂は国内の巣ごもり需要で電子材料用途の販売が増加し、海外では中国向けの輸出が堅調に推移した。医薬品精製材料は欧米、アジア向けの糖尿病治療薬用途などの需要が拡大。医薬品原薬・中間体も抗がん剤原薬・中間体などの販売が拡大した。

 通期は売上高755億円、営業利益90億円、経常利益97億円、純利益68億円の予想。

★出光興産

 出光興産の2021年4~6月期決算は、純利益が883億円(前年同期は813億円の純損失)だった。原油価格上昇により在庫影響が大幅に改善したほか、燃料油事業で油価上昇に伴うタイムラグ影響を享受した。

 売上高は同32・5%増の1兆3022億円、営業利益は1113億円(同707億円の営業損失)。同社が指標として重視する在庫影響を除いた営業利益と持分法投資利益の合計額は503億円(同31億円の損失)だった。

 セグメント利益の増益幅534億円の要因を分解すると、主力の燃料油事業が390億円の増益で全社の業績をけん引した。うち194億円の増益はベトナムのニソン製油所を中心とする持分損益改善だった。原油価格上昇に伴うタイムラグ影響も187億円の増益幅につながった。

 基礎化学品事業は、スチレンモノマーを中心にコロナ禍からの需要回復に伴うマージン改善で前年同期比66億円の増益を果たした。一方、高機能材事業は5億円の減益。機能化学品や電子材料は収益が回復したものの、潤滑油で油価上昇に伴う価格転嫁の遅れなどが生じ減益となった。

★関西ペイント

 関西ペイントの2021年4~6月期決算は増収増益で着地した。売上高は前年同期比25・2%増の977億円、営業利益は同2・2%増の87億円となった。日本やインド、欧州、アフリカなど事業展開する全地域で増収だった。

 日本では、新車用分野および自動車部品向け塗料が自動車生産台数の増加を受けて増収だった。工業分野も産業機械向け塗料などが堅調に推移。インドでは自動車分野や建築分野がコロナ禍による経済活動の低迷による影響を受けるも、前年がロックダウンの影響が大きかったこともあり売上高は大幅増となった。欧州ではトルコでの工業用分野の需要が堅調に推移した。

 アフリカでは、南アフリカおよび近隣諸国の経済がコロナ禍により厳しい状況が続いたが、建築分野の需要を取り込み売り上げは伸長した。東アフリカ地域も建築分野での堅調な需要を取り込んだ。

★東洋インキSCホールディングス

 東洋インキSCホールディングスの2021年1~6月期決算は、営業利益が前年同期比30・3%増の72億円となった。自動車やスマホ向け製品の需要回復などで主要事業がすべて増収を果たしたものの、インキや粘接着剤などの原料高が収益を圧迫。ポリマー・塗加工関連とパッケージ関連の両事業は大幅な減益となった。一方、巣ごもり需要の取り込みや高機能品の拡販などを織り込み、通期予想は上方修正した。

 売上高は同13・0%増の1393億円、経常利益は同75・6%増の86億円、純利益は同1・3倍の63億円だった。色材・機能材関連事業は増収増益。ディスプレイ需要の高まりでカラーフィルター用材料が好調だったほか、着色剤も食品容器・自動車・太陽電池など各分野で堅調に推移した。印刷・情報関連事業は供給体制最適化などの改革を進め、8億円あまりの黒字を確保。印刷市場の縮小が進む一方で紙器向けなどが堅調だったほか、一部で価格改定が進んだ。

 その他事業では、第1四半期から現れ始めていた原料高の影響が拡大した。パッケージ関連事業は国内外とも需要が堅調だったものの同33・7%の減益。ポリマー・塗加工関連事業も同18・8%の減益だった。また、原料高は色材・機能材関連事業の汎用用途にも影響を与えた。

 通期予想は上方修正。売上高は前回予想比100億円増の2800億円、営業利益は同5億円増の145億円を見込む。

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