JSRは14日、通期業績予想の修正を発表し、2021年3月期の純利益を前回予想から16・7%減となる125億円に引き下げた。同日発表したディスプレイソリューション事業の再編と50人の希望退職者の募集に伴い、構造改革費用が発生した影響を受けた。ディスプレイ事業では韓国・台湾市場の着色レジストなど一部製品から撤退するが、競争力の高い配向膜や絶縁膜などの製造は中国と九州で継続する。

 14日発表の予想では、売上収益やセグメントの稼ぐ力を示すコア営業利益を据え置いた。一方、構造改革で生じた「非経常的な要因」の損益を反映し、営業利益は前回発表予想から30億円減となる200億円となった。希望退職者の募集に伴う経費の総額や、構造改革費用の内訳は非開示とした。

 同社は液晶ディスプレイ(LCD)向けの配向膜や絶縁膜、保護膜といった主要部材で、世界シェアの5割程度を握るトップメーカー。今回の再編で21年9月までに韓国・台湾から着色レジストと感光性フォトスペーサーの製品を撤退することを決定した。JSRマイクロ台湾は22年3月末までに工場閉鎖し、JSRマイクロコリアはキャパシティを削減する。保護膜、絶縁膜、着色レジスト、感光性フォトスペーサーなどの主要部材の生産を中国の常熟拠点とJSRマイクロ九州へ移管する計画だ。

 LCDの世界市場のうち6割程度を中国勢が占めており、今回の移管で同社の中国拠点の重要性は高まる見込みだ。台湾と韓国の開発体制の一部を上海の現地法人に移管し、22年3月までをめどに人員削減も実施する。上海では今後、開発用ラボの移転・拡張を実施し、顧客への技術サービスを拡充する。

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