クラレは次期中期経営計画について、2022年から26年までの5カ年計画で策定することを決めた。当初は次年度から新中計期間に移行する計画を掲げていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が21年以降も続くと判断した。同社は26年に創立100周年を迎える。ありたい姿として定める「スペシャリティ化学企業」の実現に向け、まずは足元の課題の抽出作業に取り組む。今後、約1年をかけて新たな戦略を練り直す考えだ。

 「残念な決算というしかない」。12日に行われた20年1~6月期の決算会見で、伊藤正明社長が悔しさをにじませた。新型コロナウイルスの感染拡大という不可避な要因があったものの、同期の実績は売上高が前年同期比8・8%減の2620億円、本業の儲けを示す営業利益が同29・8%減の196億円。また、これまで未定としていた通期業績予想についても、売上高を前年比11・4%減の5100億円、営業利益を同39・1%減の330億円と公表。大幅な減収減益となる見通しを示した。

 低迷の要因は大半が新型コロナウイルスの影響によるもので、この状況は「21年上期までは続く」(伊藤社長)との見方を示す。そこで、来期からのスタートを予定していた新中計を一年間繰り延べることを決めた。21年は単年度の経営計画を実行しながら、22年から新中計の実行に移す。

 新中計の公表までには約1年間の猶予期間ができたが、まずは足元の課題抽出に注力する考えを示す。現在は、海外のメンバーを含めたワーキンググループを発足し、事業部ごとに課題の洗い出し作業を実行中だ。同課題は、9月に開催予定の経営陣による戦略会議にかけられ、新中計の織り込むとしている。

 伊藤社長は新中計について「まだ具体策はできていない」というものの、例えば顧客の業容の変化に合わせ、事業ポートフォリオの変更に取り組み姿勢を示唆している。

 新中計の最終年となる26年は、同社にとって創立100年周年を迎える一年でもある。現在、26年までの長期ビジョンでは「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」をありたい姿として掲げている。この実現に向け、まずは足元の課題を着実に克服していく考えを示した。

伊藤社長

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