中外製薬は、新型コロナウイルス感染症治療薬として開発を進めている同社創製のバイオ医薬品「アクテムラ」について技術移転に着手した。戦略提携先であるスイス・ロシュ、同じロシュグループの米ジェネンテックの拠点でも製剤化ができるようにするのが狙いで、米国の拠点では供給を始めた。同感染症治療薬としての需要拡大に備え、安定供給が可能な体制を敷く。

 現在、アクテムラは、中外が宇都宮工場(栃木県宇都宮市)で原薬と製剤の生産を担当し、世界各地へと供給している。原薬は米国とドイツで一部委託生産も行っているものの、基本的には中外が供給を一手に引き受けている。

 ただ、新型コロナウイルス感染症治療薬として期待が集まり、引き合いも強まっていることを受け、今年4月、ロシュは増産する方針を打ち出していた。そのため、中外はロシュグループと連携し、日本以外でも製剤化ができるようにしていく。

 具体的な増産幅は明らかにしていないが、すでに米オレゴン州の拠点では製剤化ができる体制を整えた。現地での治験用に供給しているとみられる。現状、新型コロナウイルス染症治療薬に限った取り組みとの位置付けだ。

 7月末のロシュの発表では、同感染症重症者に有効性を示せなかったとの治験結果が出ている。だが、他の薬剤との併用による治験が進んでいることや、一部の国・地域の治療指針でアクテムラを推奨していることなどを踏まえ、欠品を起こさない体制を整えていく。

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