★東レ

 東レは2021年3月期の通期業績予想について、売上収益の下方修正を実施した。5月に公表した1兆9200億円から1兆8400億円に引き下げた。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、世界経済の成長率が低下するといった声が上がっている。市場規模の拡大が不透明な現状にあって、今期は一層の体質強化が求められる一年となりそうだ。

 東レは2020年4~6月期から国際財務報告基準(IFRS)を適用している。同期における売上収益は前年同期比22・5%減の3976億円、事業利益は同63・7%減の125億円。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、全セグメントで減収減益を余儀なくされた。

 通期の見通しは、感染拡大が第2四半期以降にピークアウトすることを前提としている。しかし、その予想は未知数。また、収束した場合でも米中対立の激化が世界経済の回復の重しとなる可能性もはらんでいる。

 この不確実な状況にあって、東レでは現中期経営課題で掲げた「競争力強化」や「経営基盤強化」などを徹底する考えを示す。例えば、競争力強化では、今後3年間で累計1500億円のコスト削減を実現させる考え。また、経営基盤強化では、低成長・低収益事業の構造改革を進めるとしている。

 7月に当社のインタビューに応じた日覺昭廣社長は今期の事業運営ついて、「これまでにないような体質強化が必要」と強調。「固定費の削減などに徹底的に取り組んでいく」と話している。現中期経営課題で標榜する”強靱化“の実現が、持続的な成長の鍵を握ることとなりそうだ。

★デンカ

 デンカは2020年4~9月期の業績が前年同期比で減収減益になる予想を発表した。5G(第5世代通信)やリモートワーク需要向けの電子材料、車両電動化用途の球状アルミナなどは堅調に伸びていく一方、新型コロナウイルスの感染拡大でクロロプレンゴム(CR)は需要減が続くと見る。売上高は前年同期比16・6%減の1600億円、営業利益は同21・8%減の120億円と予想。通期予想は据え置いた。

 4~6月期決算は売上高が同16・1%減の762億円、営業利益は同34・8%減の44億円。コロナの影響で自動車や接着剤など向けのCRが大幅数量減となり、エラストマー・機能樹脂部門の営業利益は同66%減の13億円だった。

 電子・先端プロダクツ部門は球状アルミナ、機能フィルム、球状溶融シリカフィラーが牽引し増収増益。生活・環境プロダクツ部門もコスト効果で増益だった。微増収となったライフイノベーション部門はマロン酸ジエチルの出荷が軽微に寄与したが、検査試薬の低迷により減益となった。

★関西ペイント

 関西ペイントの2020年4~6月期決算は、営業利益が前年同期比53・0%減の38億5100万円となった。コロナ禍に伴う自動車生産台数の大幅な減少による塗料需要の低迷が主な要因。国内の建築分野は、巣ごもりに伴う家庭用塗料の需要が増加し前年同期を上回った。

 売上高は同25・2%減の780億8800万円、経常利益は同45・2%減の52億200万円、純利益は同48・3%減の21億5000万円。地域別の売上高では欧州の工業用および自動車分野が堅調に推移し、現地通貨ベースでは前年を上回った。また、原材料価格下落、のれんの償却により経常利益は同251・0%の大幅な増益に成功。

 期初段階で公表していなかった通期予想は、売上高3300億円、営業利益は180億円、経常利益210億円、純利益100億円を見込む。

★東洋インキSCHD

 東洋インキSCホールディングスの2020年1〜6月期決算は、営業利益が前年同期比9・2%減の55億円だった。新型コロナウイルス感染拡大、国内のイベントなどの中止の影響もあり、自動車、スマートフォン向け製品などが苦戦した。経常利益は同22・3%減の49億円、純利益は同4・5%減の26億円。売上高は同11・5%%減の1233億円だった。

 色材・機能材関連事業はパソコンやタブレット用のディスプレイ用カラーフィルター材が伸長したものの、大型テレビやスマートフォンの需要が低迷し高機能製品が伸び悩んだ。汎用顔料は印刷インキ用、塗料用とも低調に推移した。

 ポリマー・塗加工関連事業は、塗工材料で高速通信対応の電磁波シールドフィルムの開発や拡販が進んだものの、スマートフォン市場の低調により全般的に苦戦した。接着剤は国内で包装用が堅調に推移したが、リチウムイオン電池用が伸び悩んだ。粘着剤はディスプレイ関連や家電、自動車向けが苦戦した。

 パッケージ関連事業では、国内のグラビアインキは主力の包装用で家庭用食品向けや衛生商品向けが堅調に推移。出版用は需要減が続いた。海外では顧客や自社拠点の操業停止による影響を受けたものの、環境対応製品の拡販が進んだ。

 印刷・情報関連事業では、国内はビジネス規模の最適化や同業他社との協業、コストダウンを推進。高感度UV(紫外線)インキやオンデマンド印刷向けインクジェット用インキなどの開発や拡販にも取り組んだものの、外出自粛やイベント中止などでチラシや広告などの印刷物減少が響いた。

 通期業績予想を売上高2600億円、営業利益120億円、経常利益115億円、純利益60億円に引き下げた。

★サカタインクス

 サカタインクスの2020年1~6月期決算は、営業利益が前年同期比4・3%増の31億8100万円となった。欧米での拡販のほか、新型コロナ禍での巣ごもり需要によるパッケージ関連印刷インキの需要増が寄与。ただ、中国など一部地域では振るわず、地域による差異が生じた。機能性材料は苦戦し、同4割超の営業減益となった。

 売上高は前年同期比4・4%減の794億7200万円、経常利益はブラジルのレアル安による為替差損などで同30・5%減の25億8300万円、純利益も同37・2%減の14億9700万円にとどまった。

 印刷インキ事業は米州で増収増益。フレキソ・グラビア・メタルインキが好調だった。国内はパッケージ関連で巣ごもり需要を吸収したものの、コロナ禍による広告需要の減退で新聞・オフセットインキが不調。コスト削減で営業増益を確保した。アジアは一部でパッケージ需要が増加したものの、中国・インドなど市場規模の大きい地域で苦戦。欧州は増収を達成したが、赤字解消には至らなかった。機能性材料事業は減収減益。中国でのインクジェットインキ販売が低調だったほか、トナー需要も低迷した。

 通期予想は下方修正。売上高1618億円(期初予想1710億円)、営業利益70億円(同75億円)と大きく引き下げた。

★大日本塗料

 大日本塗料の2020年4~6月期決算は、コロナ禍の影響で需要が伸び悩み減収減益になった。主力の国内塗料事業の構造物分野は堅調に推移したが、工業分野が大きく落ち込み、売上高、利益とも前年同期を下回った。売上高は前年同期比16・1%減の152億5400万円だった。営業利益は売上高の減少に加え、売上原価率の上昇が影響し同61・8%減の4億9500万円、経常利益は同58・7%減の5億6800万円。

 セグメント別では、海外塗料事業が自動車販売台数の減少、景気後退などにより減収減益。近年業績を牽引してきた照明機器事業は商業施設向け需要が大きく落ち込み減収減益。蛍光色材事業は海外需要が落ち込み売上高が減少したが、販管費の削減が奏功し利益は前年同期を上回った。

★セーレン

 セーレンの2021年度3月期決算は、主力の車輌資材事業やハイファッション事業の低迷で苦戦を強いられそうだ。20年4~6月期決算発表時に、それまで未定となっていた4~9月期予想を公表。売上高を前年度比30・9%減の420億円、営業利益を同62・6%減の19億円とした。新型コロナウイルスの感染拡大により、市場環境の回復には時間を要するとの見方を示していることから、通期業績にも大きな影響を与えそうだ。

 4~6月期の売上高は前年同期比29・4%減の211億円、営業利益は同42・8%減の14億円だった。

 4~9月期で減収減益を予想する主要因は、車輌資材事業とハイファッション事業の低迷。車輌資材では4月以降、中国で回復に転じたものの、それ以外の地域では「生産水準の回復には、いまだ時間を要する見通し」(セーレン)。また、ハイファッション事業でもアパレル小売店舗の削減や外出自粛による客足の減少などに直面している。今後は在庫の積み増しが予想されるなど、市場環境のさらなる悪化が事業拡大の足かせとなりそうだ。

★日本板硝子

 日本板硝子の2020年4~6月期決算は営業赤字となった。新型コロナの影響で自動車用、建築用のガラス販売が落ち込んだ。4~9月期の業績は売上高を前年同期比27・2%減の2100億円、純損失を240億円、通期の売上高は前期比17・3%減の4600億円と予想。設備休止費用などの個別開示項目を含む営業損益の予想は見送った。

 4~6月期の売上高は前年同期比37・5%減の918億円、各部門とも減益となり営業損失は6億円(前年同期は88億円の営業利益)、純損失は164億円(同28億円の純利益)だった。

 建築用ガラスは新型コロナの影響から欧米で出荷が減少。一方で太陽電池パネル用は日米で堅調さだった。6月以降、欧州の窯の多くが稼働再開し、米州も低稼働率ながら全設備が操業復帰している。

 自動車用は4~5月の自動車生産激減の影響を受けた。欧州では補修用も低迷した。北米は自動車の市中在庫が減ったことから6月以降、自動車生産が回復しており、ガラス生産もこの影響を受ける。欧州やアジアは低稼働が続いている。

 高機能ガラスはファインガラスやプリンター用レンズが減少。自動車に使われるグラスコードは欧州で需要が後退した。

★エア・ウォーター

 エア・ウォーターの2020年4~6月期決算(国際会計基準)は、営業利益が前年同期比20・5%減の87億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大で産業ガスの販売量減少、病院設備工事の延期や遅延が主な要因。

 売上収益は同1・7%減の1802億円。5G(次世代通信規格)やIoT(モノのインターネット)導入を背景に半導体製造工場などへのガス販売が伸長。医療分野では院内感染リスク低減に寄与する設備機器、消耗品などの感染症対策分野で市場開拓が進展した。

 21年3月期の通期業績は売上収益が8100億円、営業利益が460億円の従来予想を据え置いた。期初段階で公表していなかった上期業績予想は、売上収益が3800億円、営業利益190億円を見込む。

★大阪ソーダ

 大阪ソーダの2020年4~6月期決算は売上高が前年同期比13%減の232億5700万円だった。基礎化学品では新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりクロール・アルカリの国内需要が落ち込んだほか、エピクロルヒドリンも国内外で需要が減少した。

 機能化学品ではダップ樹脂がUVインキ需要減少の影響を受けたが、アリルエーテル類は米国向けの拡販が進み、アクリルゴムも中国や欧州を中心に新規採用が進展。医薬品精製材料はインド、中国向けのペプチド医薬品用途で需要が拡大。液体クロマトグラフィー用カラム・分析装置は韓国向けの装置販売が好調だった。

 営業利益は同26・5%減、純利益は同13・2%減だった。通期は売上高960億円、営業利益80億円、経常利益84億円、純利益57億円と予想を据え置いた。

★大倉工業

 大倉工業の2020年1~6月期決算は減収減益となった。合成樹脂事業は原油安によるコスト低減と高付加価値製品の伸びにより増益となった一方で、自動車向けを含む新規材料事業や建材事業は新型コロナの影響で収益が悪化した。営業利益は前年同期比6・3%減の20億円、経常利益は同3・8%減の21億円、純利益は同28・7%減の13億円。売上高は同9・8%減の381億円で、減収額約42億円のほとんどがコロナの影響によるものとみている。

 主力の合成樹脂事業は、原材料の切り替えや値下がりによりコストを低減。カップ麺に使うシュリンクフィルムや衛生材料詰め替え用パウチといった高付加価値品が拡大し同26・5%の増益となった。電子・工業向けフィルムは振るわなかった。

 新規材料は光学フィルムや自動車関連製品が低調で同49・3%の減益。パーティクルボードなどの建材は新設住宅着工の減少を受けて同44・2%の減益となった。

 通期業績は期初予想を据え置いたが、需要の先行きが不透明であることから業績の悪化リスクがあるとしている。

★KHネオケム

 KHネオケムの2020年1~6月期決算は純利益が前年同期比52・2%減の16億円だった。新型コロナウイルスの影響でエアコン向け冷凍機油原料や化粧品原料のアジア需要が軟調に推移。自動車塗料などに使われる基礎化学品も国内外の需要減退に加え、原油やナフサ価格の急落による市況下落もあって採算が悪化した。

 売上高は22・7%減の372億円、営業利益は50・4%減の23億円だった。電子材料はテレワークや5G(第5世代通信規格)の普及を受けて半導体フォトレジスト向け高純度溶剤が販売数量を伸ばすも、子会社の販売が苦戦。国内2工場で2年に1度の大規模な定期修理を実施して修繕費が増えたことも収益を押し下げた。

 通期業績は5月公表の従来予想を据え置いた。売上高は前期比17・2%減の780億円、営業利益は32%減の65億円、純利益は27・7%減の50億円を見込んでいる。

★本州化学工業

 本州化学工業の2020年4~6月期決算は営業利益が前年同期比72・5%増の12億5000万円と、四半期実績としては過去最高レベルの営業利益を確保した。新型コロナウイルス感染拡大の影響はあったものの、全体的に販売数量が伸びたことに加え、原油市況の下落に伴う原材料価格低下が増益に大きく寄与した。

 売上高は同6・3%増の55億1000万円、純利益は同97・1%増の8億2000万円だった。化学品のビタミンE向けクレゾール誘導品、機能材料の光学用特殊ビスフェノールがともに堅調に推移した。電子材料は新型コロナの影響によるデジタル化の加速と、先行き不安による前倒し需要などで大きく伸長した。

 通期見通しは売上高200億円、営業利益25億円、純利益13億5000万円と期初予想を据え置いた。

★セメダイン

 セメダインの2020年4~6月期決算は、営業利益が前年同期比54・9%減の7000万円だった。新型コロナウイルスの影響で、建築土木は外装シーリング材や内装接着剤が不調で減収。工業関連も自動車、家電業界の需要減で減収だった。一方、一般消費者関連はホームセンター向けの販売が好調で増収だった。売上高は同12・9%減の56億4700万円。中間、通期予想は算定が困難として見送った。

★東洋炭素

 東洋炭素の2020年1~6月期決算は減収減益になった。コロナ禍にともなう自動車、航空機など輸送機器関連市場、半導体、エネルギー関連需要の大幅減が起因。営業利益は前年同期比34・7%減の20億6300万円、経常利益は同31・3%減の21億500万円、純利益は同36・5%減の14億6100万円だった。

 売上高は同19・0%減の155億1400万円。エリア別では日本のパンタグラフ用すり板が堅調に推移したため、機械用カーボンは若干減にとどまった。米国は半導体用をはじめ全般的に減収減益。このほか欧州、アジアにおいても需要が軒並み減少し、減収減益になった。

 期初段階で公表していなかった通期予想は、売上高300億円、営業利益32億円、経常利益32億円、純利益22億円を見込んでいる。

★日本パーカライジング

 日本パーカライジングの2020年4~6月期決算は、営業利益・経常利益が前年同期比7割近い大幅な減益となった。主力の薬品・加工事業が新型コロナ禍にともなう主要顧客の減産に直面。装置事業は赤字となった。

 売上高は同32・3%減の207億9300万円。営業利益は同69・7%減の11億9900万円、経常利益は同69・8%減の15億5400万円、純利益は同79・1%減の7億1600万円だった。薬品事業は鉄鋼・自動車など主要顧客の減産調整で約4割の営業減益。加工事業は国内の一部工場における一時休業などもあり同7割近い減益となった。装置事業は案件受注の減少と顧客の設備投資見直しで2億8400万円の営業損失となった。

 開示を見送っていた通期業績は930億円、営業利益は55億円、経常利益は85億円、純利益は50億円と予想。売上高予想が1000億円を下回るのは13年3月期以来となる。

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