米アボットの新型コロナウイルス簡易検査キットについて、半数近くの検体が偽陰性になったとする論文が米ニューヨーク大学(NYU)などの研究チームから発表された。他社のPCR検査で陽性と判定された検体の多くが見落とされた。アボットはこの結果に反論する立場を示しつつ、自社による調査も行って精度を再検証する。米国食品医薬品局(FDA)は、同検査キットで陰性と判定されてもPCR検査などで再検査することを推奨している。

 アボットの新型コロナ検査キット「ID NOW」などの精度を検証した研究として、米ニューヨーク大学ランゴーン医療センターなどの研究チームが発表した。研究はまだ査読前で、初期の研究結果を公開するウェブサイト「BioRxiv」に掲載された。

 研究チームは、米セフィエドのPCR検査キットで陽性と判定されたサンプルについてID NOWでも検査を行った。その結果、鼻咽頭から検体を採取した綿棒を輸送液に入れて処理した場合は全検査数の約3分の1、乾燥した状態で処理した場合は48%が偽陰性となった。乾燥した状態で処理するのは、アボットが推奨している方法だ。

 アボットは14日、この研究結果に反論。ID NOWに関する他の研究の多くは感度が80~90%台、最高で98%台だった結果もあるとし、「ほかの研究と整合性がない」と主張している。同社はこれまでに180万キット以上を配布しているが、報告されている偽陰性率は0・02%だったとしている。 

 FDAも同結果を受けた声明を発表。ID NOWは、陽性は短時間で正確に検査できるが、陰性反応の場合はPCR検査など精度の高い検査で再確認すべきとの考えを示した。ほかにも同検査の精度に関する報告があり、検体の種類や処理方法などの違いをふまえながら要因を調査する。これまでに15件の有害事象がFDAに報告され、偽陰性が原因と思われる事例もあるという。

 FDAによると、アボットがID NOWの市販後試験を行うことで合意し、さまざまな臨床条件から150例以上の陽性例を集めて精度を検証する。

 ID NOWはコンパクトサイズの新型コロナ検査機器で、米国では3月に緊急使用許可(EUA)を得て販売されている。陽性なら約5分、陰性なら13分で結果が出るとされる。日本では未発売。

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