日本化学工業協会は22日、同日付で就任した森川宏平会長(昭和電工社長)の就任会見をウェブ会議方式で行った。森川氏は「新型コロナウイルスへの対応も含めて、国際社会は真の持続可能な社会を構築するステージに入った」と指摘。その上で「化学産業は重要な役割を担うべきであり、化学産業が創出する社会的価値、イノベーション力を正しく発信し、会長として強力に業界をリードしていく」と意気込みを語った。

 森川氏は「化学産業が社会に必要とされる製品を安定的に供給し、発展していくには製造時、製品自体、使用後の3段階で安全と環境への配慮を高めることが重要」と述べた。その上で、日化協として各段階に対応する重点テーマを設定し、成果を発信する考えを表明した。

 化学製品の製造時では引き続き、事故情報から得られる教訓やベストプラクティスの共有に取り組むほか、設備の老朽化や熟練作業者の高齢化に対応するスマート保安も支援。日化協が新たに策定した二酸化炭素(CO2)削減目標の達成に向けた技術的イノベーションの促進などに取り組む。

 化学製品自体ではサプライチェーンを考慮したリスク管理、レスポンシブルケア活動(化学業界の自主的活動)に継続して取り組むほか、グローバル化の急速な進展により顕在化する課題に対しては海外業界団体との交流を深めて国際連携を強化する構えだ。

 会見の中で森川会長が最も強調したのが、最後の化学製品の使用後に関する部分。この段階でのより踏み込んだ活動を進めるため、化学業界などが設立した「海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)」の活動を発展させていくことを含めて「力強く推進する」と述べた。

 廃プラスチックの資源循環はモノとして再利用する「マテリアルリサイクル」、化学原料に戻す「ケミカルリサイクル」、熱などに利用する「エネルギーリカバリー」に大別される。

 森川会長は品質を劣化することなく化学原料が得られ、繰り返し利用の面でも有用性が高いケミカルリサイクルを「社会的意義がある」と語る一方、「技術的、制度的課題も多い」と指摘。サーキュラーエコノミー(循環社会)に向けてケミカルリサイクルを成立させるための技術開発、社会実装を積極的に進める考えを示した。ケミカルリサイクル推進の方策をまとめるワーキンググループ(WG)での議論を加速させることで方向性を打ち出し、国の審議会で提言する方針だ。

 ケミカルリサイクルについては「日本が技術的に遅れているとは思わない。実用化の例は少ないが、実験レベルでは様々なことが行われている。それを世界に伝える部分が弱いので、しっかりとアピールしていく」と語った。

 新型コロナが化学産業に与える影響は「これまでも相反する事柄に対応してきたが、ウイルスと経済の両立は初めての経験になる。コロナ共存下でも感染を防ぎながら、快適で健康な生活に必要な化学製品を供給することが化学業界に求められている」と述べた。

 日本の化学業界の現状については「海外勢との厳しい競争が迫られる規模の勝負はしない産業構造を築いてきた。それが世界における日本の存在感であり、そこをしっかりとサポート、アピールしていく」と述べた。

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