昭和電工の竹内元浩最高財務責任者(CFO)は15日のオンライン記者会見で、「我々の事業分野に新型コロナウイルスの影響が本格的に表れるのは2020年4~6月期から」との見解を示した。同日には公表済みだった20年12月期の通期業績を「未定」とした。業績予想を取り下げた理由については「あまりにも不確定要素が多く合理的な予想ができないため」と説明した。

 新型コロナの感染拡大によって、欧米などの主要市場で自動車や鉄鋼の生産が落ち込んでいる。これにより電炉鋼の生産に使う黒鉛電極、自動車向けアルミ機能部材、鋼材向け研削材など関連する事業分野に影響が出ると想定する。

 コロナ禍でリモートワークなどの働き方改革が進んでいることや、次世代通信規格(5G)の普及などにより、パソコンやデータセンターでデータを蓄えるハードディスクドライブ向けメディア、半導体の製造に使う高純度ガスは第2四半期(4~6月)以降も堅調さが続くとみる。

 20年1~3月期は売上高が前年同期比26・8%減の1717億円、営業利益は94・6%減の24億円だった。黒鉛電極を含む無機事業の営業利益が387億円減の8億円と大きく落ち込んだ。

 世界経済の低迷で欧州を中心に鉄鋼の生産が落ち込んでいること、電炉メーカーの在庫調整による黒鉛電極の販売減を織り込み、期初予想の段階で20年の無機事業の営業利益は前期比84・3%減の140億円にとどまる予想を立てていた。そこに新型コロナの影響が重なり、「黒鉛電極の販売は2月想定を下回る」(竹内CFO)状況だ。

 同社は欧州を中心とする生産能力の削減や減産によって、20年の黒鉛電極の販売量が19年実績比で約1割減る計画を組んでいた。欧州での需要減を受けて、オーストリアの工場は一時帰休に入っているが、新型コロナの影響がマレーシアなど他の工場の操業にも及び、グローバル全体での足元の設備稼働率は3~4割にとどまる。

 20年1~3月期は石油化学事業も営業損益が2億円の赤字と苦戦した。中国の需要減速により需給バランスが緩んでいることに加えて、原油・ナフサ価格の急落によって在庫の評価損益が悪化しスプレッド(製品と原料の価格差)が圧縮される「受け払い差」が発生。大幅な減益となった。

 期初予想の段階で21年には主要製品の需要が戻り、21年12月期は営業利益1000億円レベルに回復すると見込んでいた。竹内CFOは来期について「新型コロナが収束するのか、第2波、第3波といったものが来るのか全く読めず、現時点で見通せない」と語った。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

HP独自・先行の最新記事もっと見る