田辺三菱製薬は、新型コロナウイルス向けワクチンを日本や米国など世界で治験する方針だ。検証していた動物実験で免疫効果を確認した。8月までにヒトに投与する第1相試験を開始し、今年中に第2相に引き上げる予定。カナダの子会社メディカゴは同国と米国の工場に計1億2000万回(年間)の接種に対応する量産設備を構える。田辺三菱が本拠地を置く日本にも供給し、新型コロナ対策に貢献する。

 田辺三菱のワクチン子会社メディカゴ(ケベック市)が開発するコロナワクチンはウイルス様粒子(VLP)を使う。ウイルスと同じ構造だが、遺伝情報を持たないため増殖しないVLPを接種すると、生体がVLPをウイルスと認識して抗体を作り感染を防御する。同社はたばこの葉にVLPを作らせ、鶏卵など既存の製造技術に比べてワクチンを迅速に量産できる。

 メディカゴは新型コロナの遺伝子情報を基に作製したVLPワクチンをマウスに投与して効果を検証。1度の接種から10日間で抗体反応が最大値に達した。抗体反応がピークに達するのは一般的に3週間を要するとされており、田辺三菱によると「VLPワクチンは強力な免疫反応を期待できる」としている。

 さらに非臨床試験で有効性や安全性を確かめたうえで、8月までにカナダや米国で第1相試験を始める。田辺三菱は日本にもワクチンを供給する意向で、日本も含めたグローバル試験を検討する。臨床試験の終了は21年11月を予定する。

 もともとメディカゴは季節性インフルエンザワクチン向けにケベックと米ノースカロライナ州に量産工場を整備してきた。ケベックには接種回数に換算して2000万回、米国には1億回の製造能力を保有し、両拠点とも23年に向けて能力を倍増する拡張も計画している。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

HP独自・先行の最新記事もっと見る