AGCは2日、英製薬アストラゼネカが米国コロラド州に保有するバイオ医薬品工場を買収したと発表した。同工場は培養に動物細胞を用いる2万リットルのステンレス反応槽2基を備え、現在は稼働休止中。AGCは改修や数百人規模の工場要員の採用を進め、2021年4月に稼働を始める。投資総額は1億ドル程度の見通し。米製薬から製造受託している新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「レロンリマブ」などを量産する。 

 AGCのバイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)事業はこれまで希少疾患薬などを照準にし、少量多品種生産に向く樹脂バッグを用いるシングルユース設備を中心に日米欧で拡張を進めてきた。医薬品の効能拡大などで案件ごとの生産規模を増えるほか、大量生産に向く設備が限られることから「新規案件を逃すケースもあった」(化学品カンパニーの小室則之ライフサイエンス事業本部長)という。 

 AGCはコロラド拠点の買収によって量産に向くステンレス製培養槽の生産能力は現状の7000リットルから4万7000リットルに引き上がり、より大規模な商用案件に対応する。同工場では2万リットルの培養槽を追加で4基増設できる拡張性を備え、およそ8万平方メートルの敷地には新工場を建設する余地もあり、今後、バイオ医薬品の量産基地として投資する。

 AGCはバイオCDMOを中心とするライフサイエンス事業を成長分野に据えており、25年に売上高1000億円以上(19年度は619億円)を目標に掲げる。日米欧の既存拠点で増強投資も加速しており、「目標を前倒しで達成する勢いで事業成長を見込める」(小室本部長)と話す。

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