かけがえのない、という表現は漢字で書くと、掛け替えのない、となる。語源はよく分かっていないが、取り替えることのできない唯一のというニュアンスであり、極めて貴重で大切な、という意味になる▼最近、会社支給のパソコンが新しくなった。まだ操作に戸惑うこともあるが、全ての動きが見違えるほど素早くなった。また、データもクラウド上に保存できる。長い時間をかけて構築したデータや取材の記録などを消失する不安からも解消された。それらのデータや記録は、個人的にはもう一度作り直せと言われても困難な、いわばかけがえのない財産だ▼さて最近、起きてはならないことが立て続けに起こっている。レバノンの首都ベイルートで起こった爆発事故、そしてインド洋の島国モーリシャスで起きた座礁・重油流出事故だ。世界で最も古い都市の一つとされるベイルートは、その美しい町並みから中東のパリと称されてきた。インド洋の貴婦人と称され観光地としても人気のモーリシャス諸島は、絶景ともいえる美しい海が最大の財産という▼二つの事故は、どうやら人災の可能性が高い。不注意や意識の低さにより、かけがえのないものも一瞬で破壊されてしまう。ただ、悔やんでも時間は戻らない。もとの姿を回復するための行動を、協力し実行するしかない。(20・9・1)

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