今年の桜前線は、例年と違った進み方をしている。記録的な暖冬の影響である。全国で最初に開花が宣言されたのが東京の3月14日。東京としては統計史上最も早かった。その後28日に福島と仙台が開花したが、この時点で鹿児島はまだ▼鹿児島の開花は月が変わって4月1日だった。昨年より7日、例年と比べて6日遅い。東北地方が九州南部より早いとは意外なこと。調べてみると、福島や仙台が鹿児島より先に開花するのも、1953年に統計を開始してから初めてだという▼この現象には、休眠打破というメカニズムが関与している。翌春に咲く桜の花芽は夏に形成されて一度休眠状態に入る。これが冬に一定期間低温にさらされて目覚める仕組みだ。春先からの気温の上昇につれて花芽が成長して開花に至る▼冬に暖か過ぎた鹿児島では、花芽の目覚めが鈍かったわけだ。逆に東北は、暖冬といえども花芽の休眠打破に必要な低温が続いた。春先からの暖かさで記録的な早さで桜が咲いた▼さて4月の時候の挨拶は春爛漫。4日は二十四節気の清明だった。意味は万物が生き生きして清々しいころ。桜に限らず様々な花が咲き競う。人間社会にも活力漲る季節のはずだが巷には閉塞感が漂う。こんな時だからこそ、自然の移ろいに目を向け、美しい花を愛でる心の余裕を持っていたい。(20・4・6)

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