少子高齢化にともなって日本ではさまざまな問題が顕在化している。その一つが住宅にまつわる問題で、自治体では空き家対策が重要視されるようになっている。総務省の調査によると賃貸用、売却用などを含む空き家は2018年に846万戸と、前回の13年調査に比べて3・2%増。総住宅数に占める空き家率は13・6%に達している▼地域によって事情はさまざまだろうが、高度成長期に開発が進んだ郊外では人口が大幅に増えた後、高齢化が進んだ結果、高齢者施設への転居などによって空き家が発生してしまうという▼空き家が増えると景観の問題だけでなく老朽化で倒壊などのリスクが高まる。管理されないと雑草、害虫の発生といった衛生面で問題が生じるほか防犯・治安面の不安も広がる。ひいては地域のイメージ低下につながりかねない▼自治体では空き家化の予防だけでなく、積極的な利活用によって地域の活性化につなげようとしている。多世代が交流できるようなコミュニティースペースのほか、起業家支援の場として提供することなどが試みられている▼リノベーションなども一つの手段といえるだろう。いぜんとして新築物件に流れやすい日本だが、さまざまな技術を利用して使い勝手を高めたり、良い意味で「古さ」の魅力を引き出すことが可能なはずだ。(20・1・31)

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