高齢者福祉施設に働く知人に聞いた話を思い出した。施設の利用者共用スペースには娯楽室があり、囲碁将棋、オセロ、トランプなどのほか、ビリヤード台やマージャン卓も置かれている。そのマージャン卓でちょっとした諍いがあった▼新たに面子に加わった利用者がレートはいくらかと聞く。ここでは親睦目的だからお金は賭けないと説明されても、低額でも金を賭けなきゃマージャンじゃないと言い張る。他のメンバーがどん引きして場が成立しなかったという次第だ▼厳密に言えば賭博行為だろうが、マージャンは金を賭けるのが一般的だ。暴力団などが関与する賭博場は論外として、仲間内で卓を囲む時のレートはサラリーマンの小遣いで収まるレベル。数千円の勝ち負けは許容範囲と感じる向きも多かろう。普通のサラリーマンならば▼東京高検の検事長と新聞記者というメンバー構成も、緊急事態宣言下というタイミングも一発アウト。辞任は当然であり、訓告処分はあまりに軽すぎる▼解せないのは、自身の人事を巡る騒動の渦中にあったのに何故か。露見すればどうなるか十分に想定できたはずだが、まるで人生を賭けた大博打にも見える行為だ。マージャン好きというよりギャンブル依存症に近いかも知れない。とすればやっぱり、検察トップの地位は相応しくない。(20・5・25)

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