わたしたちはなぜ生まれ、なんのために生きているのか。古今東西、人は宗教、哲学、科学などの領域において膨大な探求を積み重ね、その答えを見つけようとしてきた。それでも人々はいぜん激しく争い、憎み合うことを止めようとしない。それが積み重ねてきたものの答えなのだろうか▼自然災害や感染症など、人知を超えた忌まわしい出来事もなくならない。通常は起き得ない特殊なことが運悪く起こったのだろうか。科学が明らかにしてきた地球のメカニズム、そこに棲む生物のメカニズムをみれば、それは遠い昔から当たり前のように、何度も繰り返されてきたことのように思える▼何か重大なことがおこるたび、世界はニューノーマルにシフトとすると言われる。変化する環境に柔軟に対応できなければ、持続可能な社会を築けない。確かにその通りだろう。しかしわたしたちは、金融工学とコンピューターによって暴利をむさぼることや、デジタルプラットフォーマーが世界の富の大層を吸い上げるような世界に恭順し、有り難がるべきなのだろうか▼地球とそこに棲む生き物が織りなすメカニズムに寄り添うこと。そして明るい社会を作りたいと願うこと。われわれはようやく、そこまで辿り着いたはずだった。変化への対応とは別に、もう一度帰るべき場所があるはずだ。(20・6・23)

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